EXHIBITIONS

-浮遊する位相-池田龍雄の軌跡

2020.02.03 - 02.22

池田龍雄 BRAHMAN 第5章 点生 1980-81

池田龍雄 BRAHMAN 第1章 梵天 1974

池田龍雄 BRAHMAN 第5章 点生 1981

池田龍雄 BRAHMAN 第10章 場の相 1987

 日本の戦後美術を代表する画家のひとり・池田龍雄の個展が開催されている。 

 1928年、佐賀県伊万里市に生まれた池田は、43年に海軍航空隊へ入隊し、特攻隊員として訓練中の17歳で終戦を迎えた。多感な時期に戦争に翻弄され、戦中・戦後で真逆の価値観を突きつけられた経験こそ、今日の池田の創作の原点となっている。

 画家を目指して上京した後は、岡本太郎らに強く影響を受け、アヴァンギャルドな作風にのめり込んだ池田。日本の戦後美術を代表する作家となった現在も、社会を見つめる厳しい視点が紡ぎ出した作品群は、いまを生きる人々に強く問いかける。

 本展では、池田が1973年から15年間つくり続けた「BRAHMAN」シリーズを中心に約20点が展示されている。

「BRAHMAN」とはヒンドゥー教における普遍的な原理のこと。池田が73年に行った「梵天の塔」というパフォーマンスを経て、改めて浮上した時間、宇宙、生命といったテーマを掘り下げることで、「BRAHMAN」シリーズは制作された。第1章の「梵天」から「宇宙卵」「球体浮遊」「螺旋粒動」「点生」「気跡」「結象」「晶華」「褶曲」「場の相」と、全10章で構成された同シリーズの作品群は約300点。この作品群は1点1点で完結するものではなく、作品同士が関連することで、1点が部分であり全体でもあるという東洋哲学的な思想を持って展開される。

 本展は「BRAHMAN」の全10章を揃え、池田の思考と継ぎ目なくつながり広がっていく宇宙を体感する場となる。