EXHIBITIONS

栗林隆「出部屋」

栗林隆 福島第一原子力発電所の横の海にて 2012 撮影=志津野雷

栗林隆 バスク地方の海にて 2012 撮影=志津野雷

 栗林隆は1968年長崎生まれ。93年武蔵野美術大学造形学部日本画科を卒業後、10年以上をドイツで過ごし、アーティストとしての足場を固める。帰国後数年のうちにインドネシアへ渡り、現在はジョグジャカルタを拠点として世界各地で活動。東西分断の歴史を持つドイツでの滞在の影響もあり、「境界」をテーマに、様々な視点から物事の異なる側面を喚起させる作品を制作している。

 2015年のアートフロントギャラリーでの個展「Deadline」では、代官山が津波に遭うと想定し、津波が残すマーキングラインを長崎と広島の爆心地の土、福島第一原子力発電所近郊の津波の被害を受けた場所の土で描いた。18年、フランスのPALAIS DE TOKYOでの展示では、7000枚以上のマジックミラーでつくった6メートルの木のインスタレーション《The connection between the sea and the sky》を発表。筒状の木の中に入ると、水中から見上げた福島・逗子・インドネシアの空の写真を見上げるようになっており、地域、水と空、入口と出口など様々な「境界」を示した。

 9月末より、栗林は瀬戸内国際芸術祭2019の秋会期に参加する。出産前後の1ヶ月を女性のみで生活した、伊吹島の独自の風習を象徴する産院跡地「出部屋(でべや)」を舞台に作品を制作中だ。

 瀬戸内での展示に先がけて、アートフロントギャラリーでも「出部屋」をテーマに個展を開催。心の中に豊かな庭をつくる「にわし」としての近年の試みを含め、自身のアーティストとしての存在を問うような展示となる。