EXHIBITIONS

マキ・ナ・カムラ「まるで、* 砂糖が水にだんだんとけゆくのをみていた子どもが、自分の体はそんなふうにお風呂にとけ出さないのにな、とひとり問うてみるかのようなもの展」

2019.09.07 - 10.05

マキ・ナ・カムラ 左は《GiL LVIII, 2014/19》、右は《GiL LVII, 2014/19》 2014 / 19 © Maki Na Kamura

マキ・ナ・カムラ DSM III 2019 Photo by Jens Ziehe © Maki Na Kamura

マキ・ナ・カムラ DSM XVII 2019 Photo by Jens Ziehe © Maki Na Kamura

 マキ・ナ・カムラは大阪府生まれ、ベルリン在住のペインター。愛知県立芸術大学で絵画を学んだ後に渡独し、デュッセルドルフ芸術アカデミーでヨーゼフ・ボイスに師事したイェルク・インメンドルフのもとで学んだ。2013年にファルケンロート賞を受賞。17年にはオストハウス美術館(ハーゲン)で大規模個展を開催。CFA(コンテンポラリー・ファイン・アーツ、ベルリン)、ドーン・ダエネーンス美術館(ベルギー)でも立て続けに個展を行い、ヨーロッパを中心に目覚ましい活躍を続けている。

 ナ・カムラは、ジョルジョーネ、ニコラ・プッサン、ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ、ジャン=フランソワ・ミレーなどルネサンスから現代までのヨーロッパの絵画を参照。画集で見つけた16〜18世紀の絵画や版画作品の画像をスキャンした後、簡易なレーザープリンターで出力することで現われる色すじ(線)や縞模様を取り入れ、何世紀にもわたる時間の厚みを絵画に含ませている。

 このほか、キャンバスの周囲に余白を描くことでフレーム自体を絵画に内包し、それが「完結した絵画であること」「絵画自体をモチーフにしていること」を表明。作品タイトルには、一定期間に制作された作品を定義するための略語とローマ数字を採用し、主題を曖昧にすることで、意図的に絵画を解放しようと試みている。

 本展では、多様化する現代の美術表現のなかで、絵画の本質と可能性を探求し続けるナ・カムラの最新ペインティングを紹介。文筆家・キュレーターの上妻世海による書き下ろしのテキストを収録した小冊子を発売予定。

* 本展のタイトルの一節は、対話集『Aus Gesprächen mit André Fraigneau』のなかで語られた、ジャン・コクトーが引用したピカソの言葉からきている。