EXHIBITIONS

線の造形、線の空間

飯塚琅玕齋と田辺竹雲斎でめぐる竹工芸

飯塚琅玕齋 花籃 1936頃 撮影=渞忠之

初代田辺竹雲斎 柳里恭花籃 1925 撮影=渞忠之

 竹のしなやかで強度のある特性を生かし、編組技術によってかたちづくられる竹工芸。竹を割り、削って加工した多様な「線」は豊かな表情や質感を示し、「線」の連なりは構造と同時に装飾ともなって、竹の造形が立ち上げる。

 竹工が職人的な技芸を超えて個人の表現として追求されるようになるのは大正、昭和期のこと。江戸時代末期から明治にかけて中国からもたらされた煎茶文化が興隆し、唐物の道具が珍重されると、籠師と呼ばれた職人たちは唐物を写した精緻な編みの竹籠を制作するようになった。やがて大正時代に起こった工芸の近代化に伴い、竹工においても唐物写しを脱して、伝統技法や先達の制作を革新させた創意ある作品がつくられるようになり日本固有の工芸分野へと発展していく。近年は竹工芸の展覧会が海外で頻繁に開催されるなど、日本の文化を紹介する上で貴重な資料となっている。

 本展では、大正、昭和期に東京で活躍した飯塚琅玕齋(いいづか・ろうかんさい) と、大阪を拠点とした初代田辺竹雲齋(たなべ・ちくうんさい)を中心に、琅玕齋の兄・二代飯塚鳳齋、琅玕齋の息子・飯塚小玕齋、そして二代竹雲斎、三代竹雲斎、四代竹雲斎の作品を展示。2つの家系の作品120余点によって、大正から昭和、現在までの竹工芸作品を見渡し、各作家が既存の技法や前世代の制作を革新させてきた「線」による立体造形の魅力を紹介する。