EXHIBITIONS

牧田愛「人工的神々-Man has, as it were, become a kind of prosthetic God-」

2024.09.21 - 10.27

牧田愛 解剖と改造(Dissection/Modification) 2024 Oil on canvas 180 × 300 cm

 PARCELで、牧田愛による個展「人工的神々-Man has, as it were, become a kind of prosthetic God-」が開催されている。

 牧田の作品は、技術の進化が社会に及ぼす影響とその倫理的な使用に対する深い考察から生まれ、とくに歴史的な事件や事故、技術の人為的な誤用が引き起こした悲劇が彼女の創作活動に影響を与えている。技術の進歩は、利便性の追求のいっぽうで、時としてその適用が社会に深刻な影響を及ぼすことがある。その技術の象徴的なモノとしてのエンジンや機械機構が牧田の作品では描かれているが、人によって設計されたにも関わらず、意図しないエラーによって引き起こされるイレギュラーに惑わされる社会を揶揄しているように思える。

 人工知能や機械学習技術の急速な発展は今日の社会に新たな課題を生んでいる。仕事が奪われる脅威や、人工知能自体の人格化といったことが議論されているが、牧田もほかの多くの作家同様この問題に対して、これら技術(道具)をどのように活用するのかが重要であると考えており、技術の進化がもたらす新たな芸術的対話と批評的構造を提示する。

 さらには牧田が機械やエンジンを描き始めた初期からの特徴として視点の誘導が挙げられるが、画面上に立体的に絡みあっている要素はそのほとんど同一レイヤー上にあり、奥行きといった視覚的なヒエラルキーを取り除かれている。とくに今回の牧田の生成された画像をベースにした作品群は伝統的な西洋絵画における明暗や遠近によって生み出されるフォーカスポイントよりも、浮世絵にも見られる平面的に広がった視点誘導に近く、構成要素のサイズも誇張され歪められ、尺度が現実に即していないからこそよりリアルに見える機械風景を提示している。

 本展では、Midjourney、DALL-E 2、ChatGPTなどのツールを駆使ししながらもエンジンやパイプ、無機質な都市の風景などいままで同様のモチーフをベースにした作品を展示。ただし、画像生成されたイメージと現実のあいだには予期せぬミストランスレーションがあり、それを巧みに取り入れながら牧田は、生成された素材に対して自らの美的・形式的基準を適用し、最終的なペインティングをつくり上げるというプロセスを通じて技術、AIと人間の関係性を掘り下げている。