大井戸猩猩

　BLUM & POE 東京では、作家・大井戸猩猩（おおいど・しょうじょう）の個展を開催する。

　大井戸は1984年大阪府生まれ。微細な隙間を持った色彩の断片の数々で構成した抽象画を制作。その作品は、逆光のプリズムや遠くに光る星々を思わせるような煌めきを放っている。

　屋久島の森で経験した自分を取り巻く自然現象に導かれるようにして、創作活動を始めた大井戸。キャンバス、紙、コットン、ボードを支持体にして描かれた作品群は、発光するキノコなど、作家自身が出会った生き物を模するように、作品の中心から広がるような動的な印象を感じさせる。作家の即興的な筆の動きによって、極めて細かく配置されていった内から外に広がっていくような幾何学的形状から構成される形態は、細胞の構成や恒星系など自然界の姿を映しているようにも見える。そして、そこに見るわずかな不完全さによって、その一つひとつの形状が丁寧に描かれたものであることがわかる。

　また大井戸は、用いる色彩の選択もその制作のなかで即興的に行っている。例えば、自然界にあまり存在しない鮮やかな赤やターコイズブルーの絵具を用いた作品では、異なる色彩とともに丹念に織り込むように描くことで、様々な色調を包み込んだような、全体としてニュートラルで落ち着いた色調の印象を与える。

　本展は、大井戸にとってBlum & Poe 東京では初の個展となる。