EXHIBITIONS

棚田康司展「はなれていく、ここから」

棚田康司 僕は僕の中に薔薇を持っている(部分) 2022 撮影=宮島径

棚田康司 反逆のポートレート:C.S.とミサイル 2022 撮影=宮島径

 ミヅマアートギャラリーでは、棚田康司による個展「はなれていく、ここから」が開催される。

 棚田は1968年兵庫県明石市生まれ。現在、神奈川県茅ヶ崎市在住。パンデミックという状況にあっても、手を休めることなく辛抱強く制作と向き合う時間を過ごしている。近年の活動として、今年11月に、隈研吾が設計を手がけた兵庫県伊丹市の新庁舎に、三沢厚彦の作品とともに棚田の作品3体が恒久設置されることが決まっており、建て替えのために伐採された樟を利活用した作品が姿を変えて市庁舎へ戻る。また第30回平櫛田中賞の受賞も記憶に新しい。

 本展では、コロナ禍の最中に制作された《宙の像》と《2020年 全裸の真理》が対峙する。1本の大きな樟をふたつに割って制作された2体の女性像は、いっぽうは槍の先のように尖って宙へ向かい、もういっぽうは真実を映すような深い眼差しを持ち、はるか彼方の地平を俯瞰しているように見える。

 加えて、新シリーズ「反逆のポートレート」を発表。ミサイルやロケットの噴煙とともに、キャロリー・シュニーマンやハンナ・ウィルケら女性アーティストの肖像が描かれたキャンバス作品が展示される。

 これまでの棚田の彫刻は、時事問題との直接的な関わりとはある程度の距離を置いて制作されてきたが、今回描かれた絵には、いまをどう生きていて何を見ているのか、という棚田自身の別の視座が現れている。

 自らの身体を使って表現をし、アートの開放を示したフェミニスト・アーティストの肖像を描くことは、近年、成人女性の裸婦像を多く創出している棚田にとって、ジェンダーやセクシュアリティなど、現代の人間が抱える本質的な問題に目を向けるだけではなく、人体のヌードをいかに肯定させていくかということへの彫刻を主軸としたアプローチでもあるという。

 本展覧会は、より広い視点を持って変容し深化していく棚田の作品世界を堪能できる内容となる。