EXHIBITIONS

KINJO 個展「Hey, River Snake C'mon.」

2022.08.27 - 09.18

KINJO 個展「Hey, River Snake C'mon.」より

 parcelでは、KINJOによる個展「Hey, River Snake C'mon.」が開催される。

 KINJOは東京都出身。沖縄にルーツを持ち、日本と関わりの深いアメリカ文化を題材にした絵画や立体、パフォーマンスを発表してきた。「暗闇に光る目」「シリアルパッケージ」「蛇」などの記号を、「描いて」は「消す」をくり返す作業のなかでアウトラインが薄ぼけ曖昧となり、作家自身のポートレイトのように愛嬌のある姿で「個人的な存在」に変容する。それはKINJOにとっての自画像のようなものであり、自身のルーツを掘り下げていく行為でもある。

 本展では、暗闇に光る目を描いた「One’s Eyes」、生き物やアニメのシーンをモチーフとした作品、それらをパッチワークした作品シリーズなど、大小のキャンバスをインスタレーションとともに展示する。

 暗闇のなかに光るキャラクターのような目を描いたKINJOの代表的なシリーズは、作家自身が幼少期に他人の目や向けられる視線に苦手意識を持っていたことが原点にあるという。歳を重ねることでその視線に対する恐怖心は薄れていった作家だが、当時の意識は心のなかにとどまっており、目がモチーフの作品をつくるようになった。

  KINJOの描く目は抽象化され、キャラクターやアニメを通して既視感があるからこそ、私たちはそれを即時に「目」だと認識できる。絵画のなかにある目はこちら側のどこかを見ているようだが、しかし全体像は闇に隠れ明らかになっていない。視線を注ぐ側・受ける側の両者にはあいだがあり、視線を受ける側は相手の姿かたちや目線の行き先を知らないまま、キャンバスの向こうに想像をめぐらせることとなる。

 いっぽう、生き物をモチーフとした作品シリーズは、KINJOの親族が様々な種類の動物を多く飼育していることから、身近な存在のひとつとして描かれている。そこには人命より寿命の短いペットが家に迎えられ、死に、繁殖してまた新しく生まれるというサイクルがあり、同時にその周囲ではペットを飼うこと自体についての議論も起こる。しかし周囲の意見はペットの存在と密接にある作家の感情とは少し離れたところにあり、また飼い主ではなく時折飼育を手伝っている作家に対して直接ぶつけられるものでもなく、そこにはKINJOにしか感じ得ない、他人との意識のずれやすれ違いが生じている。

 アニメのシーンが描かれている作品も同様だ。KINJOの扱う一見キャッチーなモチーフは、記号的なメッセージではなく、作家自身のルーツともいえるような個人的な事象の表現として描かれている。それらはキャンバスの上で描いては消され、時に異なる断片的なモチーフが接ぎ合わされる。何かの目、生き物を飼うという行為に伴う社会性、フィクションと現実との関係性など、それらを描く行為を繰り返しながら、他者との感情のすれ違いやコミュニケーションに生まれる歪み、そしてそのなかにいる自身に対しての客観的な視点を、KINJOはキャンバス上に描き出している。