EXHIBITIONS

エリサ・インスア「sugar coated lies/甘い嘘」

2022.08.26 - 09.11

エリサ・インスア「sugar coated lies/甘い嘘」展示風景より

エリサ・インスア「sugar coated lies/甘い嘘」展示風景より

エリサ・インスア「sugar coated lies/甘い嘘」展示風景より

 アルゼンチン出身のアーティスト、エリサ・インスアによるフィジカルとデジタルを融合させた新しいアート作品展「Sugar Coated Lies(甘い噓)」が開催。京都芸術センターと、先駆的なアーティストをサポートするクリエイティブ組織strataとの協働企画となる。

 インスアは1990年生まれ。廃材を用いて、大型のアッサンブラージュ、彫刻、インスタレーションを制作。経済学とビジネスを学んだ経歴をアーティスト活動と掛け合わせることで、大量消費主義、資本主義、生態学、人間の飽くなき欲求をテーマとした作品を手がけている。

 本展で発表される、インスアの新しい彫刻作品は、世界有数の豪華な建築物として知られる3つの建物、ムンバイにある世界でもっとも高級な私邸「アンティリア・ハウス」、世界一の高さを誇るドバイのビル「ブルジュ・ハリファ」、そして経済力の象徴とされるニューヨークの「トランプ・タワー」を表現している。物質主義への誘惑のパラドックスを考察する枠組みとしてこれらの贅沢な建築物を取り上げることで、建物本来の目的を超えた、支配的なイデオロギーや富の尺度を伝える役割を作品に与えている。

 インスアはアーティスト活動のなかで「商品化する」という行為にまつわる問題に対し、ヒトの経済活動、過剰消費、貪欲さ・満足しきれなさ、というレンズを通して向き合ってきた。廃棄されたモノを用いてかたちづくられたアッサンブラージュからは、身近なモノや素材の寿命、人類が引き起こす汚染問題について、見る者に考える時間を与える。

 今回の「Sugar Coated Lies」は、賞味期限の過ぎた砂糖菓子(簡単に手に入るものの、長続きはしない満足感への誘惑を象徴するもの)を素材としている。グリム童話『ヘンゼルとグレーテル』の現代的な解釈を一風変わった素材で行い、人間の欲深さと誘惑の象徴として、食欲を刺激する砂糖菓子という素材が強調されている。そして彫刻に、「3D立体モデリング」と「AR(Augmented Reality)世界の彫刻というデジタル技術」を駆使した点で、インスアにとって新機軸となる作品だ。制作にあたっては、strata Creative Technology Studioのガイダンスのもと、オープンソースの3Dデザインソフト「Blender」とstrataのカスタム・ツールを取り入れ、フィジカルとデジタルを融合している。

 彫刻そのものは賞味期限切れのキャンディを樹脂で固めてつくられているが、この3つのフィジカルな土台をstrataのモバイルアプリを通したARの世界で見ると、建物全体が現れる。アプリは、App Store、またはGoogle Playストアから簡単にダウンロードでき、デジタルの世界では、「Sugar Coated Lies」にアクティブに関わり、世界的に有名な建造物を自分で動かす、自身の環境に置いてみるなど、豪華な建物の相違や対比を探ってみることができる。

 今回は3つの作品のほか、ミニサイズの作品も300点限定で販売され、9月1日から「Sugar Coated Lies」のウェブサイトを通して購入可能。作品購者は、strataのモバイルアプリを利用し、インスアのフィジカルとデジタルによる世界を体験できる。