EXHIBITIONS

事象の浜辺

2022.08.06 - 08.28

© Ryo FUJIMOTO

 Sprout Curationではグループ展「事象の浜辺」が開催される。本展は、出現と消失の際に意識を導くアートと、その道具立てとしてのキュレーションの試み。出品作家は尾関諒、齋木克裕、鈴木健二、高嶋晋一+中川周、藤本涼の5組。

 尾関諒は1986年愛知県生まれ。東京藝術大学大学院油画科を卒業後、2011年なら13年までドイツ・カールスルーエ造形美術大学に在籍。ベルリン滞在を経て、16年より国内で活動する。筆を転がすようにして色の粒子にまた別の色の粒子をまとわせる独自の技法で、油彩を実践している。

 齋木克裕は1969年東京都生まれ。92年に創形美術学校で絵画を専攻したのち、96年に東京綜合写真専門学校を卒業。主に写真をメディウムに用いて、イメージにおける表象性と、展示空間のなかでの現前性の関係を問う作品を制作している。

 鈴木健二は1974年愛知県生まれ。98年に東京造形大学造形学部美術学科を卒業、翌年に同大学研究生を修了した。鈴木の制作は、セラミックホワイトの油絵具を練り直し、入念な下地調整を施したキャンバスの裏面に塗布することから始まる。乾く前に自由な曲線を、そして乾いたあとに吟味された直線を描くことで、見る者との永遠の応答を可能にするピクトリアル・オブジェクトを実践している。

 高嶋晋一+中川周は、パフォーマンス作品などを手がけ、執筆活動も行う美術作家の高嶋(1978年東京都生まれ)と、博物資料やプロダクツの撮影に携わる写真家・映像作家の中川(1980年高知県生まれ)によるユニット。2014年から共同で映像制作を開始し、それ自体は画面内に見えるものではないカメラの運動性を基軸とした作品を発表している。2人は運動視差を利用した測量にも似た手法で、人間不在の世界を描く。

 藤本涼は1984年東京都生まれ。2010年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了。眼前に立ち現れる光景を「触れられなかったイメージ」ととらえ、それらのイメージへの触れ方、距離の測り方を写真を用いて展開する。近年の主な展覧会に、「先端芸術2020 アペラシオン」(東京藝術大学大学美術館陳列館)、「under 35 クラウドフォーカスの行方」(BankART SILK、横浜、2019)などがある。