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ジャクソン・ポロック

Jackson Pollock

 ジャクソン・ポロックは抽象表現主義を代表する画家のひとり。1912年アメリカ西部ワイオミング州コーディ生まれ。ニューヨークのアート・スチューデンツ・リーグで学んでいた兄チャールズとともに画家のトーマス・ハート・ベンソンに学ぶ。当時のアメリカは経済不況にあり、社会的主題を描いた社会派の画家、ディエゴ・リベラやダビッド・アルファロ・シケイロスらメキシコの壁画家、キュビスムの画家などが活動。美術動向が多様に分岐するなか、ポロックはこれらに影響を受けながら、アメリカ・シーンを描いた地方主義のベンソンに倣って、初期は自然を主題とした具像画を描く。

 35〜43年まで、失業者救済の一環として政府が発足させた、公共事業促進局(WPA)の連邦美術計画に従事。同時期にシケイロスが主宰した「実験工房」に参加し、絵具が床に飛び散る壁画作品の制作現場を目の当たりにする。このときの経験が、絵筆を使わずに描く「ドリッピング」のヒントとなる。47年より、巨大なキャンバスを床に敷き、その中央に立って穴を空けた缶に入れた絵具を滴らせることで描く「ドリッピング」作品の制作を開始。48年にベティ・パーソンズ画廊での初個展を開催し、無意識下のイメージを記述するオートマティスムの作品を発表。49年に『ライフ』誌で「現存する偉大なアメリカ画家」の特集を組まれ、一躍脚光を浴びる。オートマティスムから手がかりを得ながら、「ドリッピング」に加えて、キャンバスの周囲を動きまわり、棒などを使って絵具を垂らす「スプラッシュ」や、中心を欠いた方向性のない絵画「オール・オーバー」の技法を考案。描き手の痕跡を追体験させるような作品で抽象表現に革新をもたらしたポロックの表現は、美術批評家のハロルド・ローゼンバーグの言葉から総じて「アクション・ペインティング」と呼ばれるようになる。56年没。