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彦坂尚嘉

Hikosaka Naoyoshi

 彦坂尚嘉は1946年東京都生まれ。多摩美術大学絵画科在学中の69年に、堀浩哉、石内都、刀根康尚、宮本隆司らとともに「美術家共闘会議(美共闘)」を結成し、反体制運動に参加する。70年より自宅の8畳間と縁側にラテックス(工業ゴム)を大量にまき、乾くまでの様子を撮影する「フロア・イベント」を開始。70年代以降の日本のコンセプチュアル・アートの先達となって、美術表現の制度そのものを根元から問い直す活動を続ける。制作の行為やラテックスが変化していくさまを、写真を使って表現する「情報アート」の試みの一環として始まった「フロア・イベント」シリーズは、その後、自室の畳や家具を移送する、またラテックスをまいている写真を使った案内状などの紙作品や、パフォーマンスの一連の流れをまとめたスライドショーへ多様に展開される。近年は、2017年に「切断芸術運動展」(東京都美術館)をキュレーションし、欧米の名画を切断して組み替える作品などにも取り組んでいる。

 主な展覧会に「グローバル・コンセプチュアリズム展」(クイーンズ美術館、ニューヨークほか、1999)、「Century City」(テート・モダン、ロンドン、2001)、「Art, Anti-Art, Non-Art: Experimentations in the Public Sphere in Postwar Japan, 1950-1970」(Getty Center, Research Institute Exhibition Gallery、ロサンゼルス、2007)、「Re: play 1972/2015―『映像表現 '72』展」、再演」展(東京国立近代美術館、2015)など。主著に『反覆 新興芸術の位相』(1975)。作品は、国立国際美術館(大阪)、豊田市美術館、The Getty Research Institute(ロサンゼルス)ほか多数のパブリックコレクションに収蔵されている。