「甲斐荘楠音の全貌―絵画、演劇、映画を越境する個性」(京都国立近代美術館/2月11日〜4月9日)
甲斐荘楠音といえば、独特の作風を持つ日本画家として主に知られているであろうが、本展でその画業は最初の章でコンパクトに扱われるのみであり、画家以外の側面、すなわち溝口健二や伊藤大輔の映画における風俗考証の仕事やトランスジェンダーとしての側面に主眼が置かれている。それらはいまだ、美術の外部にあって無関係なものと通常考えられているかもしれない。しかし、現代の美術界では「内部」と「外部」を安易に分けることはできず、「外部」が「内部」に入り込むようになっている。そういった意味で本展は現代行われてしかるべき「真っ当」な展覧会だと評価すべきだろう。