CAPCボルドー現代美術館
ワインで有名なボルドーには、半世紀の歴史を誇るCAPCボルドー現代美術館がある。同館は1973年の創立時は現代造形美術センター(Centre d'arts Plastiques Contemporains、通称CAPC)として知られ、84年には独自の作品収集を行う美術館となり、2002年には文化省から「フランス美術館」、2021年には「国益現代美術センター」のラベルを授与された。国内外をリードする文化施設として、50年のあいだに486の企画展を行うと同時に、館内外でも多様なプログラムを提供してきた。
CAPCボルドー現代美術館は、パリから南西に新幹線で最速で2時間のボルドー市の中心部にある。当時、パリのポンピドゥー・センター(1977年創設)、リヨン郊外のヴィルールバンヌ新美術館(1978年創設、現在IAC Villeurbanne)、マガザンと呼ばれる国立現代美術センター・グルノーブル(1986年創設)をのぞけば、フランスで現代美術に特化した施設はほとんどなかった。解体される予定だった、19世紀に植民地からの商品を保管するために建てられた巨大な「レネ倉庫」を、当時美術学校の教師だったジャン=ルイ・フロマンの指導で現代アートの発信拠点とした。各国からボルドー空港に直接訪れる観光客向けの促進だけでなく、地元の小学校を訪問する黄色い「アートバス」で教育普及活動から始めた実績もあり、その評判は国内外で広く知られるようになった。
現在、美術館はゆったりとした3フロアに合計5500平米の展示スペースを有し、複数の企画展を同時開催している。その建物には1824年に竣工した近代建築の面影が残っている。館内に入るとまず、ひんやりとした広大な吹き抜けの展示スペース「Nef(中央身廊)」のただなかに立つのだが、空間を複数の円弧を描いた構造が支え、大きな扉と複数の窓や館内の各倉庫への入り口上部も同様の曲線デザインを有し、幾何学の優雅さがある。1984年から90年にかけて改修されたが、この基本構造は保存されスペース間を行き来する開口部として機能している。