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「東京ビエンナーレ 2023」のテーマが発表。来年に向けた「はじまり展」も開幕

2023年7月から開催される「東京ビエンナーレ 2023」の概要が発表。また、来年に向けた「東京ビエンナーレ2023 はじまり展」も開幕した。

展示風景より、日比野克彦《ALL TOGETHER NOW(Transforming box series)》(2022)

  2023年7月から10月にかけて開催される「東京ビエンナーレ2023」。これに先駆け、「東京ビエンナーレ2023 はじまり展」が開幕した。

 第1回となる「東京ビエンナーレ 2020/2021」は新型コロナウイルスの蔓延による延期を経て、2021年7月から9月にわたり開催された。2回目の開催となる今回は正式名称を「東京の地場に発する国際芸術祭 東京ビエンナーレ2023」とし、東京都⼼の北東地域を中心に開催される。

 前回は中村政人と小池一子が総合ディレクターを務めたが、今回は小池に代わり西原珉が新たな総合ディレクターとなった。西原は心理療法士で、90年代の現代美術シーンで活動したのち、ロサンゼルスでソーシャルワーカー兼臨床心理療法士として勤務。現在はアートとレジリエンスに関わる活動を行いながら秋田公立美術大学の教授を務める。なお、西原は前回の東京ビエンナーレの参加作家としてアートセラピーやソーシャル・ワークを実施する「トナリプロジェクト」を行っており、次回のビエンナーレでも継続した活動を行うという。

「東京ビエンナーレ2023」のプロジェクトメンバー。中央が総合ディレクターの西原珉、中村政人

 プロジェクトプロデューサーは中西忍、プロジェクトディレクターは岩間賢、小池一子、宮本武典、クリエイティブディレクターを佐藤直樹が務める。

 「東京ビエンナーレ 2023」のテーマは「リンケージ つながりをつくる」となった。「リンケージ(つながり)」をとらえ、場所、時間、人、生物、植物、できごと、モノ、情報など、あらゆる存在が複雑に関係しながら変容する世界で、新たなつながりをつくり、深め、強くする場を目指すという。なお、前回のビエンナーレに参加できなかった海外作家や、新たな参加作家も内諾を得ているという。

 来年のビエンナーレ開催に先駆けて、10月6日には「東京ビエンナーレ2023 はじまり展」が開幕した。本展では2023年に向けての計画展示と、すでにスタートしている複数のアートプロジェクトを見ることができる。

 会場は東京・上野の東叡山寛永寺、後楽園の東京ドームシティ、神田小川町の優美堂の3ヶ所だ。

 東叡山寛永寺では「寛永寺プロジェクト」が開催。日比野克彦、鈴木理策、西村雄輔、中村政人が参加し、創建からまもなく400年を数える寛永寺の歴史や空間と対峙し、多様な人々と協働しながら新たな関わりを探る。会期は10月30日まで。

 日比野は寛永寺の中庭に《ALL TOGETHER NOW(Transforming box series)》(2022)を展開している。徳川家の菩提寺である寛永寺には6人の徳川将軍の墓があるが、日比野はここに埋葬されていない9人の徳川将軍がこの寛永寺に乗り物でやってきて語り合う様子を段ボールで表現した。すべての段ボールは切り貼りをせず糸の結びつきのみでつくられている。

展示風景より、日比野克彦《ALL TOGETHER NOW(Transforming box series)》(2022)

 鈴木理策は根本中堂のなかで作品を展示。寛永寺には1868年、15代将軍の徳川慶喜が謹慎されていた。鈴木はコロナ禍で人々が外出を自粛せざるを得なかった時間を、慶喜が謹慎していた2ヶ月間に重ねたという。鈴木は上野に残る旧幕府軍と新政府軍が戦った上野戦争をはじめとする時代の痕跡を撮影。11分の映像作品《1868》(2022)を上映する。また、鈴木は徳川慶喜が写真を趣味としていたことにも注目。慶喜に見せたい風景を「#徳川慶喜に見せたい風景」というハッシュタグをつけてInstagramに投稿すると、会場の端末に表示される仕組みとなっている。

展示風景より、鈴木理策《1868》(2022)
鈴木理策のプロジェクト「#徳川慶喜に見せたい風景」

 西村雄輔は根本中堂の前に土の柱を建てた作品《ECHO works》(2022)を制作。西村は上野の様々な土地の土を採取して柱を制作。この柱を起点として意識を張り巡らせるように紐を広げた。紐はすべて途中で切れているが、これは来年に向けた成長への思いを込めたものだ。

展示風景より、西村雄輔《ECHO works》(2022)

 中村政人による《メタユニットM1プロジェクト_寛永寺》(2022)は、建築家・大野勝彦と積水化学工業が1970年に開発したユニット式住宅を使った作品。この住宅は中村が所有しているものだ。中村は解体とリユースを前提としたこの住宅の思想を伝えるために、東京ビエンナーレ2023の場でも使うという。住宅の中では「東京ビエンナーレ2023計画展示」として、来年の開催に向けたプレゼンテーションのためのパネルや動画が展示されている。

展示風景より、中村政人《メタユニットM1プロジェクト_寛永寺》(2022)

 このほか、東京ドームシティでは高橋臨太郎が《Radius harps / After  a  typhoon》を展示。また優美堂では前回展でスタートした「優美堂再生プロジェクト」を展開。中村政人が協力者とともに額縁屋「優美堂」をコミュニティアートスペースとして改修するものとなっている。

 なお、大手町・丸の内・有楽町一帯でも新たなプロジェクトが計画されており、詳細が決まり次第発表されるという。

編集部

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