「他者」とのあいだに生まれる作品。インタビュー:荒木悠

異文化間の差異や摩擦に注目し、その真正について問いかけるスタイルで一躍注目を浴びた荒木悠。gallery αM(東京)の展覧会「『約束の凝集』vol.4 荒木悠」で見せた新たな作家の姿とその心境について話を聞いた。

聞き手・文=中川千恵子(十和田市現代美術館アシスタント・キュレーター)

スタイリスト・荒木悠氏が経営するヘアサロンLetrAのネオン看板を40%サイズで再現した《LetrA》(2021)の前で撮影=黑田菜月

アイデンティティの不確かさ

 荒木悠は、「ニッポンノミヤゲ」(資生堂ギャラリー、2019)、「双殻綱:第一幕」(無人島プロダクション、2017)、「複製神殿」(横浜美術館アートギャラリー1、2016)に見られるような、異文化間で現れる差異や誤訳、他者からの眼差しやオリジナリティの不確実性など複数のテーマを組み合わせて展開する作品が評価を受けている作家である。gallery αM で開催中の展覧会「『約束の凝集』vol.4 荒木悠」では、そのように評価されてきた荒木の作品イメージとは少し印象の異なる作品が並ぶが、荒木は、一連の作品は継続して取り組んできた実践の延長線上にあると話す。「イメージ・メーカーとして、やっていることはいたってシンプルなんです。2009年の《Deep Search》をいかに乗り越えるか、というのが課題としてずっとあった。どうすればあのときワクワクドキドキした感覚に制作を持っていけるかを試行錯誤していたら、12年も経っていました。その過程で、“リサーチ型”のような作家像(イメージ)が付いてしまったことへの戸惑いと反省もあり、このタイミングでA面B面をひっくり返すような、イメチェンをしてみたくなったのです。先鋭的な試みを支えてきたgallery αM という稀有な空間だからこそ、今回その実験が思いっきりできました」。

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