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2024.1.21

20世紀を見つめた女性画家。マリー・ローランサンの軌跡をたどる

日本で高い人気を誇る画家、マリー・ローランサン。パステル調の画風で知られる作家だが、その画業においては様々な変遷があった。その軌跡をたどってみたい。

文=Verde

マリー・ローランサン 三人の若い女 1953頃 マリー・ローランサン美術館

 マリー・ローランサンという名前から、私たちは何を思い浮かべるだろう。例えば、《二人の少女》のような淡いパステルカラーに彩られた、ロマンチックで物憂げな人物画か。あるいは、詩人アポリネールとの恋のエピソードだろうか。それらのため、ローランサン自身についてもロマンチックな人物像がイメージされやすい。しかし、その実像は果たしてどうだったのだろうか?

 アーティゾン美術館では、ローランサンの初期から晩年に至るまでの画業を紹介する展覧会「マリー・ローランサン─時代をうつす眼」が開催されている。本稿では、展覧会の展示作品を紹介しながら、いま一度20世紀を生きた女性画家マリー・ローランサンの軌跡を、その時代背景とともにたどってみたい。

「キュビスム」の画家ローランサン

 19世紀後半、とくに印象派が登場して以降、パリでは次々と新しい美術の潮流が生まれていた。20世紀初頭には世界各地から若い芸術家の卵たちが集まってきて、互いに刺激し合いながらそれぞれに独自の画風を追求していた。そのような個性のぶつかり合いのなかから、生まれてきた20世紀の大きな美術の潮流が「キュビスム」である。

 キュビスムとは、ポスト印象派の画家セザンヌの言葉「自然を円筒や円錐、球として扱う」をヒントにピカソとブラックが始めた試みである。セザンヌは自然を立体物としてとらえていたが、彼らはそれをさらに推し進め、モチーフを単純な面の要素に分解し、それを画面の上に再構築することを目指したのである。

 従来の絵画がモチーフの目に見えるままの形を画面の上に「再現」することを基本にしていたことを考えれば、「キュビスム」は「ものの見方」そのものの転換を促す画期的な試みだったと言えよう。そんな「キュビスム」にフアン・グリスやロベール・ドローネーら多くの若い画家が惹きつけられ、運動に参加した。マリー・ローランサンもそのひとりだった。

 1883年にパリで生まれ、育ったローランサンは、当初は私立の画塾で伝統に則った古典的技法を学んでいた。しかし、同じ画塾に通うブラックと親しくなったことが彼女にとって最初の大きな転機となった。彼の紹介でピカソや恋人となる詩人アポリネールと出会った彼女は、彼らが住まうアトリエ兼住居「洗濯船」に出入りするようになり、画風においても彼らの推し進める「キュビスム」に魅せられ、その影響を強く受けていくのである。その最初期の作例として25歳(1908年)のときの作品、《自画像》を見てみよう。