EXHIBITIONS

特別展「空也上人と六波羅蜜寺」

康勝作 重要文化財 空也上人立像  鎌倉時代・13世紀 京都・六波羅蜜寺蔵 写真=城野誠治

重要文化財 伝平清盛坐像 鎌倉時代・13世紀 京都・六波羅蜜寺蔵

六波羅蜜寺 写真=浅沼光晴

 東京国立博物館では、空也上人没後1050年の節目に特別展「空也上人と六波羅蜜寺」を開催する。

 平安京に疫病が流行した際、念仏を広めたことで知られる空也上人。南無阿弥陀仏ととなえて極楽往生を願う阿弥陀信仰をいち早く広め、山林で修行をしながら各地を遍歴し、橋梁や道路などの整備や行倒れた人を弔うなど社会事業を行って、庶民から有力者まで幅広い信仰を集めた。10世紀半ばには、京都の東山の地に十一面観音立像を本尊とした六波羅蜜寺の前身となる西光寺を開き、972(天禄3)年に70歳でその生涯を閉じた。

 西国三十三所第17番札所にあたる六波羅蜜寺には、現存最古となる空也上人の像が伝えられている。念仏をとなえ歩いた姿を目前にするような写実的な像は、仏師・運慶の息子である康勝が手がけたもの。同寺は運慶一門にゆかりの深い寺でもあり、運慶作の地蔵菩薩坐像などが残されている。

 本展では、東京では半世紀ぶりの公開となる《空也上人立像》をはじめ、六波羅蜜寺の創建時につくられた《四天王立像》、定朝作と伝えられる《地蔵菩薩立像》などの重要文化財を含む、平安から鎌倉時代の彫刻の名宝が一堂に集う。

 心の安寧を祈り、生涯を捧げた空也上人の姿と、六波羅蜜寺の歴史と美術を通して、疫病や困苦のなかで懸命に生きた人々の信仰の厚みにも思いを馳せる機会になる展覧会だ。