EXHIBITIONS

山内祥太 個展「Ballet Mécanique」

2022.02.12 - 03.05

山内祥太 Ballet Mécanique ♯1 2022

山内祥太 「ワルツ」シリーズ 2022

山内祥太 「カオ1」シリーズ(CGでのシミュレーション) 2022

山内祥太 「舞姫」のためのポージング 1 2022

「TERRADA ART AWARD 2021」で金島隆弘賞とオーディエンス賞を同時受賞したアーティスト・山内祥太。その受賞後初となる個展「Ballet Mécanique」がRICOH ART GALLERYで開催される。

 山内は1992年岐阜県生まれ。2016年東京藝術大学映像研究科メディア映像専攻修了。現在は神奈川県在住し、制作を行う。ダブル受賞となった「TERRADA ART AWARD 2021」では、ディスプレイ上に映し出された人間の皮膚をまとったゴリラが、実際の舞踏家の動きと同期しながら、老いと若返りを繰り返し舞い続ける映像作品《舞姫》を出展。「デジタルとフィジカル」「老いと若さ」といった対立する事象を恋愛になぞらえながら、互いの距離を計測しようとした本作は話題となった。

 本展は、展覧会と同タイトルの作品《Ballet Mecanique ♯1》のほか、「ワルツ」「カオ1」「『舞姫』のためのポージング」の各シリーズで構成。リコーの2.5次元印刷技術「StareReap(ステアリープ)」による作品は、これまで作家が映像で表現してきた要素を、最新の印刷テクノロジーを用いて実体化する挑戦ともなる。

「Ballet Mécanique」と「ワルツ」シリーズは、コンピュータ上で生成されたイメージを、StareReapの立体印刷によって受肉させようという試み。表題作「Ballet Mécanique」はフランスの画家フェルナン・レジェが1920年代前半に制作した実験映画の題名に由来している。レジェは、運動する人間をクローズ・アップで撮影することで、身体をパーツごとに分断し、そこに別の視点を与えようとしていた。リコーの工場にあるStareReap専用の巨大プリンターが稼働する姿を目の当たりにした山内は、「まるで機械が踊っているようだ」と形容しており、「Ballet Mécanique」における企てにおいては、レジェの短編映画との部分的な共鳴を窺わせる。

 いっぽう、2021年の年始に公開された代表的な映像作品「カオ1」は、作者の顔をかたどったCGモデルに、多様なイメージが積層を繰り返し、変容し続ける作品だ。RICOH ART GALLERYで発表する今回のシリーズは、極めて彫刻的なアプローチをした立体作品となる。質量を持った映像を現実の世界に還元するための手法として、StareReapと、工業部品トレーなどに用いられるバキューム成形の技術を組み合わせている。

「かねてからグラフィックイメージを実体化する検討を重ねてきました」とリコーの技術者に語った山内。ゴリラをモデルとした《舞姫》もリコーの立体印刷によって、新たなテクスチュアを獲得しその世界観を拡張する。

 本展は山内の2021年の取り組みを一望しつつ、これから先にある展開を予感させるもの。「デジタルとフィジカル」の境界を照らし出すStareReapとのコラボレーションに注目してほしい。