EXHIBITIONS

サイトウマコト「見えるもの、見えないもの。Face Landscape 2021」

サイトウマコト Face Landscape 2021_01 2020-21 Photo by Kenji Takahashi © Makoto Saito Courtesy of Taka Ishii Gallery

 タカ・イシイギャラリーは、サイトウマコトの個展「見えるもの、見えないもの。Face Landscape 2021」を開催。同ギャラリーでの初個展となる本展では、ペインティング作品「フェイス・ランドスケープ」シリーズより、新作の大作品4点と、小作品数点を展示している。

 サイトウは1952年福岡県生まれ。無数のドットを膨大な時間をかけて手作業で描いた絵画作品で、圧倒的な視覚体験をもたらしてきた。造形された極小の立体作品のように緻密に塗り重ねられた絵具は、まるで増殖過程にある無数の細胞を思わせる。主な個展に「サイトウマコト 臨界-Criticality-」(北九州市立美術館、2019)、「サイトウマコト展:SCENE[0]」(金沢21世紀美術館、石川、2008)など。作品はヴィクトリア&アルバート美術館(ロンドン)、サンフランシスコ近代美術館、ニューヨーク近代美術館、フィラデルフィア美術館、金沢21世紀美術館、東京国立近代美術館など国内外の多くの美術館に収蔵されている。

 90年代半ばより絵画作品の制作を始めたサイトウは、自身の創作意欲を掻き立てる「顔力」を持つ人物をその主題に選んだ。当初はスタンリー・キューブリックなど映画作家や、その作品の1コマに映る人物の全身像イメージを用いていたが、やがて人間の狂気が刻み込まれた顔に焦点を絞っていく。ルシアン・フロイドやフランシス・ベーコン、アントナン・アルトーなど、ポートレイトイメージを素材としてコンピュータ上で解体・再構成した網点状の設計図をつくり、このデジタルデータを受肉させるかのようにキャンバス上に絵筆で描くスタイルを確立した。

 さらにサイトウは、デジタル上の解体・再構成のプロセスにおいて拡大したデータの細部に思いもよらない別のイメージを発見した。こうした断片を収集し、新たなキャンバスの上に重層的にコラージュすることで抽象絵画「フェイス・ランドスケープ」シリーズが生まれた。

 色彩と絵具のボリュームからなるサイトウの絵画の視覚情報を一目で処理・把握することは難しい。画面は絶えず微動し、鑑賞者は作品との様々な間合いを試しながら、マクロとミクロのあらゆる視点から無限の風景に出会うだろう。