EXHIBITIONS

語りの複数性

川内倫子 はじまりのひ 2018

大森克己 心眼 柳家権太楼 2019

岡﨑莉望 目 2014

小島美羽 終の棲家 2019 写真=加藤甫

小林紗織 映画『うたのはじまり』絵字幕 2019 ※参考画像

百瀬文 聞こえない木下さんに聞いたいくつかのこと 2013

山崎阿弥 島膜_Ibuki(瀬戸内国際芸術祭2019) ※参考画像

山本高之 悪夢の続き 2020

 見ることや聴くことは、受け取る人がいて初めてそこに現れるという意味で、その人が語ることでもある。物事を受け取り表現する方法は、ひとつではなく、視覚を使わずに見る人や、手話を使って話す人がいるように、人の身体の数だけ「語り」は存在する。

 本展「語りの複数性」は、情報があふれるからこそ貧しくなっていた、様々な語りのあり方と、その語りを紡ぎだす身体を想像する展覧会。8人の作家による写真、絵画、模型、描譜、映像、音といった様々な形態で「語り」を表現した作品を紹介する。参加アーティストは、大森克己、岡﨑莉望、川内倫子、小島美羽、小林紗織、百瀬文、山崎阿弥、山本高之。会場構成は建築家・中山英之が担当。

 本展が美術展への初参加となる小島美羽は、これまでに制作してきた孤独死を扱った模型作品を出品。映画『うたのはじまり』の絵字幕で注目を集めた小指(小林紗織)は、25メートルにおよぶ自分史を譜面に落とした新作を発表する。

 また本展では、川内倫子の写真絵本『はじまりのひ』を、目が見えない人たちが表現。目が見える人と見えない人が集まって、バラバラな「見方」を持ち寄ることで、自分なりの写真を見る経験を立ち上げた読書会を経て、展示会場では、目が見えない4人が読書会のなかでとらえた『はじまりのひ』を、言葉や言葉以外の方法で展示する。

 展示される作家8人の作品は、全体像を把握するための情報がよめないことが特徴だ。完全に情報が揃っていないからこそ想像する余地があり、同じ作品から複数の体験が生み出される。鑑賞者の想像する力を借りて、独自の鑑賞体験が立ち上がる展覧会。