EXHIBITIONS

森村泰昌「二重拘束の美学」

森村泰昌 左から《硝子細工のマルセル 1》(2021、写真製作=あかつき写房)、
《カフカの居る風景 1》(2015 / 2021、写真製作=若林久未来)、
《反転絵画(ボデゴン)》(1994/2021、写真製作=山本柱)

森村泰昌 左から《劇場 2020》(2020、カラー写真)、《劇場にて》(1988 /2018、カラー写真)

 モリムラ@ミュージアムは、美術家・森村泰昌の作品を常設する美術館。5回目の開催となる企画展では「二重拘束(ダブルバインド)の美学」と題して、2つの企画で森村の作品を展示している。

 二重拘束(ダブルバインド)とは、相反する2つの立場から同時に拘束を受けること。例えば、新型コロナウイルスの感染を防止することと経済の活性化という、同時に選べないような状況を指す。森村は「二重拘束のきしみを、むしろポジティブに受けとめて、表現行為として活かす方法はないものか」と考え、これを「ダブルバインド・ゲーム」と名づけた。

 本展の第一部「だぶらかしの美術史」は、井野敬裕(森村泰昌芸術研究所所属)が企画。同じテーマを、異なったバージョンで繰り返し挑戦する傾向を持つ森村の作品による、バトル(対立性)を通じてこそ見えてくる、作品間の親密性に注目する。

 第二部「あぶりだしの写真史」では、あかつき写房、山本柱[HashiLaboratory]、若林久未来[Art Office K]の3組の技術協力を得て、クリエイターの松本和史が企画を担当。森村の作品を3種の古典的な写真技法、ヴァンダイクプリント、ソラリゼーション、ガラス湿板写真で新たに生まれ変わらせることを試みる。