EXHIBITIONS

空間に生きる画家 猪熊弦一郎

―民主主義の生活空間と造形の試み

2021.04.17 - 06.06

猪熊弦一郎 慶應義塾大学学生ホール壁画 デモクラシー 1949
設計=谷口吉郎 慶應義塾大学蔵 撮影=平山忠治 ©︎ The MIMOCA Foundation

猪熊弦一郎 六つの顔 1950 香川県立ミュージアム蔵 ©︎ The MIMOCA Foundation

猪熊弦一郎 三越包装紙 華ひらく 1950

 香川県出身の猪熊弦一郎(1902〜1993)は、戦前から戦後にかけてパリ、東京、ニューヨーク、ハワイで活躍した画家。戦後すぐの日本では、とくに建築やデザイン分野への強い関心を持ち、平面と立体を横断するような作品を手がけた。

 猪熊は、「僕は自分で建築をやり、家具も何も全部を総合したものが作りたい。壁も、よければ画をかけるし、いけなければかけない。そういう大きな立体をやりたい。けれども、それは絶対に一人の力ではできないのです(*)」と語っており、生活空間や協働など建築に関わる様々な要素を考えながら総合芸術としての建築に取り組んだ。

 本展は、1950年代の猪熊の仕事に注目。猪熊と仲間の芸術家たちが分野を超えた総合芸術を目指し、協働で手がけた作品を音楽になぞらえたように、本展は交響曲のソナタ形式で構成される。

 会場では、三越包装紙の《華ひらく》(1950)をはじめ、平面デザインでありながら包むと立体になる猪熊の作品を展示。株式会社高松三越の協力のもと、《華ひらく》の部屋も登場する。

 また特別展示として、画家の後輩にあたる県立丸亀高等学校の生徒たちが原寸大で複製した、猪熊の初めての壁画作品《デモクラシー》が披露される。

「空間」と「生活」をキーワードとした本展を通じて、激しく変化する時代を反映しながら絵画の枠を超えて芸術に向き合った、猪熊を新たな視点でとらえる。

*──佐波甫「猪熊弦一郎氏と語る」『教育美術』12巻1号(1951年1月号)p.16

※香川県立ミュージアムは新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、5月3日~5月31日まで臨時休館。最新情報は公式ウェブサイトへ。