EXHIBITIONS

松村淳「METAFICTIONAL ADAPTATION CYCLE」

2021.04.02 - 05.01

松村淳 JUDITH COMPLEX UNIT - 01α 2021 磁土 H19×W151×D17 cm / H7.4×W59.4× D6.6inches

 陶芸家・松村淳の個展「METAFICTIONAL ADAPTATION CYCLE」が現代 美術艸居で開催。本展では、オブジェの新作約10点を展示する。

 松村は1986年千葉県生まれ。2015年に多治見市陶磁器意匠研究所、18年に金沢卯辰山工芸工房を修了。現在は埼玉県にて制作を行う。近年の主な展覧会に「MOMENT」(Giant Year Gallery、香港、2017)、「⻘か、白か、- ⻘磁×白磁×⻘白磁」(茨城県陶芸美術館、2020)、「No Man’s Land – 陶芸の未来、未だ見ぬ地平の先– 」(兵庫陶芸美術館、2021)など。幾何学的な曲線を持つ白い磁器作品で知られ、近年は国内外のアートフェアにも出展するなど活躍の幅を広げている。

 特徴的な曲線を持った松村の作品は、磁土を轆轤(ろくろ)や鋳込み、手捻りで形成し、素焼きののち時間をかけて削り、やすりをかける作業を経て生み出される。また陶芸の道に入るより以前、アメリカで海洋生物学を学んでいた松村は、生き物の生態を調べ進化の歴史を考察するうち、「興味の対象が自己内部へと向かうようになった」と言う。部分的に掛けられた透明釉の質感が、複雑にうねりながら流れるラインを一層立体的に引き立てつつ、冴えた印象を作品にもたらすその独特なフォルムは、必ずしも作家の意図によって立ち現れるものではなく、無意識のなかからやってくるものだ。

 松村にとって作品の制作は、困難を伴う作業に没頭している間の過集中状態(ゾーン体験、あるいはフロー状態)にあるなかで、作家本人の自己の潜在意識が作品を通じ浮かび上がってくることであり、その作品を第三者の目に晒すことは、その潜在意識をかたちづくっている記憶や経験などのインプットについて改めて客観的に検証する機会でもある。

 作品制作で生じる負荷を「進化に必要な環境ストレス」と表現し、そこに身を投じている時のフロー状態が楽しいとさえ語る松村。その探究心と、現代工芸の突然変異種でありたいとする作家の最新作に注目してほしい。