EXHIBITIONS

伝説の絵師 岩佐又兵衛 三大絵巻

山中・浄瑠璃・堀江一挙公開

2021.03.12 - 04.20

伝 岩佐又兵衛勝以 浄瑠璃物語絵巻(部分) 江戸時代(17世紀) 重要文化財

伝 岩佐又兵衛勝以 山中常盤物語絵巻(部分) 江戸時代(17世紀) MOA美術館蔵 重要文化財

伝 岩佐又兵衛勝以 堀江物語絵巻(部分) 江戸時代(17世紀) MOA美術館蔵

 江戸時代初期に活動した絵師・岩佐又兵衛(いわさ・またべえ、1578~1650)。豊かな頬と長いあごを持つ「豊頬長頤」の人物表現や、和漢が混合した独特の画風で一世を風靡し、後の絵画に多大な影響を与えた。

「浮世又兵衛」の異名をとったその作品は、中国・日本の古典や故事に取材したものから、当時の人物を生き生きと描いた風俗画にまでおよんだ。なかでも、操浄瑠璃(あやつりじょうるり)の上演のための正本(テキスト)を詞書とした極彩色絵巻群は、又兵衛工房の総力を結集して制作された長大な作品で、又兵衛の画業を語る上で欠くことのできないものだ。

 本展では、又兵衛の古浄瑠璃絵巻群を代表する「山中常盤物語絵巻」「浄瑠璃物語絵巻」(2件ともに重要文化財)、「堀江物語絵巻」の三絵巻を一堂に公開する。

「山中常盤物語絵巻」は、牛若が山中の宿で盗賊に殺された母・常盤御前の仇を討つ筋書き。生気あふれる力強い作風から、又兵衛自身の関与がもっとも高いと考えられている。いっぽう「浄瑠璃物語絵巻」は、牛若と三河矢矧(やはぎ)の長者の娘・浄瑠璃姫との恋愛譚を中心にした内容で、金銀泥や高価な顔料を用いた絢爛豪華な作品であり、これら2作はともに津山藩主松平家に伝わった。

 そして「堀江物語絵巻」は、下野(現在の栃木県)の豪族・堀江三郎の子が、豪族間の紛争によって非業の死を遂げた父母の仇討ちを果たす物語。又兵衛は「山中常磐物語絵巻」や「浄瑠璃物語絵巻」と同じく、操浄瑠璃などで上演されていたものを絵巻物とした。

 三絵巻の内容は、MOA美術館所蔵の詞書でのみ知ることができ、芸能資料としても貴重な作品。本展を通して、絢爛豪華な又兵衛絵巻の魅力を堪能したい。