EXHIBITIONS

演芸資料展 見世物の「近代」—開国から明治の時代

国立演芸場 1階 演芸資料展示室
2020.12.01 - 2021.03.21

錦絵 チヤリネ大曲馬御遊覧の図 明治19年 東京・吹上御苑 国立劇場蔵

錦絵 異国渡り大象の図 文久3年 江戸・西両国広小路 国立劇場蔵

 国立演芸場が演芸資料展「見世物の『近代』—開国から明治の時代」を開催中。本展の監修は川添裕(横浜国立大学大学院教授)。

 海外からの人、モノ、技術、文化が大波となって押し寄せた明治時代の日本。それ以前の「鎖国」下にあっても、中国またオランダとの長崎貿易などを通じた海外文物が限定的に入っていたが、開国以降のとくに横浜へは、欧米各国からの製品、世界各地の産品、西洋文物が堰を切ったように大量に流れ込み、日本の「西洋化」「西洋的近代化」が急速に進められていった。

 庶民にもっとも親しまれた身近な芸能娯楽「見世物」も、この流れのなかに置かれた。開国により、外交使節だけでなく民間人が来日できるようになったことは重要で、早くも1864(元治1)年の横浜居留地ではアメリカ人興行師が曲馬興行を行っている。

 開国はまた珍しい異国の動物を次々と日本にもたらし、舶来動物の見世物が興行界を賑わせた。明治期に各国からやってきた「西洋曲馬(サーカス)」は見世物の新しい華となり、その影響を受けて日本にもサーカスが誕生。この他、新奇な欧米の見世物が続々と来日して注目を浴び、時にそれは歌舞伎の題材ともなった。

 1866(慶応2)年からは、日本の一般人の海外渡航が可能に。最初に旅券を取得して横浜から出航したのはじつは曲芸師の一団であり、その後も多数の日本人曲芸師と見世物関係者が海を越え、主として欧米で活躍した。そして海外体験を経た「洋行帰り」の者たちが、明治の興行界を引っぱっていくこととなった。

 本展では、西洋文化の影響を受けて変化していく日本の「見世物」の様相を、錦絵や絵番付、当時配られた寄席ビラなどを通じて紹介。見世物の「近代」を見つめ、私たちがよって立つ過去の時代と文化を知る機会としたい。

 なお連携展示として、国立劇場伝統芸能情報館では企画展示「見世物の精華」を開催中(~5月26日)。また3月13日には、展示監修の川添裕を迎えた講座「見世物の楽しみ」(国立劇場 伝統芸能情報館 3階 レクチャー室)も予定している。