EXHIBITIONS

attunement

2020.10.03 - 10.18, 2020.10.23 - 10.25

© 岡田将充(OMD)

畑山太志 素視 #3 2020

畑山太志 草木言語 #5 2020

久保田智広 凭れるエステ 2020

 ふたりのアーティスト、久保田智広と畑山太志の表現を通して他者理解の可能性を探る「attunement」が開催される。本展は、カリブ海マルティニーク出身の詩人エドゥアール・グリッサンが提唱した「共与(ドネ=アヴェク)」をその実践の手がかりとする。

 グリッサンは自著『「関係」の詩学』(2000)において、自らを起点として一方的に他者の「輪郭をつかみそれをみずからに引き戻すような」かたちの自己中心的な理解のモデルに対し、自身を他者に委ねるような理解のモデルである「共与(ドネ=アヴェク)」を提案した。これは、他者を起点にした理解の方法であり、すでにある「他/多」に対して自らを重ね合わせることを意味している。

 本展に参加する久保田は、ものを「捨てる」という行為を取り巻く集団的判断をテーマに制作を行う作家。自身がほかの作家と共同で運営するスタジオにあふれるものを「廃棄」するという実践を通して、共同体としての未来のあり方を問いかけている。

 いっぽう畑山は、視覚ではとらえることのできない自然の場に潜む「気」のような存在を、白という禁欲的な色彩と感覚的かつ大胆な筆致を通して画面上に浮かび上がらせてきた。畑山が描く静かな画面は、そこに描かれる対象だけでなく、描かれていない画面の外の空間を同時に前景化し、空間に身を浸すような感覚へと鑑賞者を誘うことで、自らがその一部であるような「自」と「他」の境界のゆらぎへと促す。

 そんなふたりの実践の交錯として、本展はコミュニケーション方法としての「言語」を基点に、他者理解の新たな可能性を模索。文字や音声に限らず様々な要素を含む「言語」に耳を傾け、「自」と「他/多」の境界を揺るがす作家ふたりの試みを紹介する。本展は、東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科に在籍する岩田智哉が企画・キュレーションを担当。