EXHIBITIONS

ジェームス・リー・バイヤース「奇想詩」

2020.01.24 - 02.29

ジェームス・リー・バイヤース The Poetic Conceit 1983 Silk curtain, framed photographic print, porcelain plate, 361 × 520 × 53 cm Courtesy Michael Werner Gallery, New York and London.

ジェームス・リー・バイヤース The Figure of Question 1989

ジェームス・リー・バイヤース The Star Book 1990

 SCAI THE BATHHOUSEの設立30周年記念展のひとつとして、コンセプチュアル・アーティスト、ジェームス・リー・バイヤースの個展が開催される。

 バイヤースは1932年アメリカ・デトロイト生まれ。心理学と美学を学び、マルセル・デュシャン、ミニマリズム、フルクサスの影響を受け、生前は独自の美意識をもった荘厳なインスタレーション、パフォーマンスを展開。また、1958〜1967年の約10年間を京都とニューヨークを行き来しながら暮らし、禅、茶道、書道などの日本文化や東洋の神秘主義に多大な影響を受けた。70年代からは放浪的な生活を行い、欧米のパブリックスペースや文化施設で多くのパフォーマンスを行った。

 ヨーゼフ・ボイスの同時代人として並び称されるバイヤースは、「最初の完全なる疑問形の哲学」という理念をもって作品を制作。美学の古典的な形式を参照しながら、彫刻やパフォーマンス(演劇)、文学に融合し、ものの「存在」という不思議な現象に目を向けさせた。物質と精神性に分け入る多様な表現は、ドクメンタ5(1975)における伝説的なパフォーマンスや、金や白などの象徴的な色彩で空間と自分自身を覆った作品群の軌跡によって、現代美術史に深く刻み込まれている。

 本展では、バイヤースが来日時に制作した作品とともに、作家の哲学を象徴する代表作を展示。「存在」に関する哲学的な問いを美術の中枢に据えたバイヤースの理念に立ち返る。

 ドイツ古典主義者を参照した表題作の《The Poetic Conceit(奇想詩)》(1983)は、作品を構成する様々な要素が一体となり、バイヤースの哲学的理念や歴史に対する崇敬、新しいコミュニケーション形式の純粋な希求を表す記念碑的作品。壁面が暗幕で覆われゲーテの肖像のレプリカと、完璧な円をかたちづくる白いプレートが祭壇の供物のように置かれ、物質とスピリチュアル世界の神妙なバランスによって、バイヤースの瞑想的なミニマリズムが詩人ゲーテの時代精神との交差を見ることができる。