EXHIBITIONS

吉原治良展「The Persistence of Form」

吉原治良 Untitled 1965-1970

吉原治良 Untitled 1965-70

吉原治良 Untitled 1965-70

吉原治良 Untitled 1965-70

 具体美術協会の創設者であり、日本の抽象絵画の先駆者でもあった吉原治良。本展では、吉原の半世紀にわたる画業を代表する「円」シリーズの作品群を展示する。

 吉原は1905年大阪府生まれ、72年没。初期の作品はモダニズムに傾倒し、その後、ジェスチュラル・ペインティング(身振りによる抽象絵画)へ移行。その傍ら、現代美術懇談会を結成し、ポスト印象派やシュルレアリスム、アンフォルメルや抽象表現などの芸術表現を熱心に研究した。

「円」シリーズ制作のきっかけは、1951年にジャクソン・ポロックの作品との出会いであった。同じ頃、国際性と日本独自の表現をいかに両立させるかを模索していた吉原は、パフォーマンスとしての美術や従来にない作品の制作こそが出発点になると気づかされ、具体の規範ともなる「画家は独創的な表現や作品の質を求めるだけではなく、それらが徹底的に実験的であるべき」という信念を貫いて、60年代に「円」シリーズに着手した。

 50年代に直線や曲線を描いていた吉原はその延長として、絵画における地と図の造形的な関係性を探求するためのモチーフに「円」を選んだ。円を基本形として、大きさ、左右の対象性や幅を探求しながら、紙やキャンバス上に円を描き、ときに意図して塗料を滴らせるなど、素材を使用した実験的制作も行った。そして晩年には、シンプルな円と線形形式が洗練され、また一時「漢字」をモチーフに、新たな兆しも見せた。

 本展では、現代美術史への徹底した理解のもと、日本的感性と欧米の最新様式の融合を試み、戦後日本美術の発展に貢献した吉原の軌跡を見ることができる。