EXHIBITIONS
Positionalities
金光男 東恩納裕一 山田周平
文化研究者・山本浩貴によるキュレーション展「Positionalities」が京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAで開催されている。参加アーティストは、金光男、東恩納裕一、山田周平の3人。
「Positionalities」の言葉を冠した本展は、3人の現代アーティストの作品を並置することを通じて、作家が多様な社会・政治的問題にアプローチする時の立ち位置の重層性を浮かび上がらせる試み。
3人の作家について山本は、「ソーシャリー・エンゲージド・アートやアート・アクティビズムの観点から眺めると、美術史的文脈とも接続させながら、芸術を通して社会と個人の関係性を問い続けてきた山田、金、東恩納の実践はいずれもユニークかつ重要なものと言える」と述べると同時に、「加えて、ときにエモーショナルにときに挑発的に鑑賞者を刺激する彼らの作品は、アナリティカルで客観的視座を備えた作品の多い日本におけるソーシャリー・エンゲージド・アートやアート・アクティビズムの領域で異彩を放つ」と考察している。
山田は、ニヒリズムとユーモアを背景に、ミニマルでコンセプチュアルな作品を、写真や映像、立体、平面と様々な作品形式で展開。近年はテキストを使った作品制作に注力している。「hahaha」シリーズは2020年、ロンドン滞在中に失声症になった経験に由来。2013年には、The ArmoryShowのキュレーション部門において、当時のアンディ・ウォーホール美術館(ピッツバーグ)館長のエリック・シャイナーにより唯一の日本人として選出され話題となった。
金はシルクスクリーンの技法を応用し、蝋を塗ったパネルに定着させたイメージに熱を加えることで、そのイメージが溶けて崩れながら固められるという独自の手法を使って作品を制作。その手法を通じて、在日3世として日本に生まれ育った状況を投影している。
東恩納は1990年代に、フロイトが論じた、日常身の回りにあるモノに潜む「不気味さ/unheimlich」をテーマに制作をスタートさせた。蛍光灯を多用した「シャンデリア」シリーズなどで知られ、近年は「un-unheimlich(ウン-ウンハイムリヒ)*」というアイデアのもと、長らく自身の作品ベースにあった「不気味さ」という概念の機能・有効性を問い直すをことを試みている。
山田、金、東恩納は「社会-個人-歴史」の連累のなかで過激で挑発的な芸術実践を行い、それらは言語化しにくい感情や情動、あるいはその徹底した欠如に基礎付けられている点で共通しているが、それぞれの作品における作家自身の立ち位置は大きく異なるという。
本展キュレーターの山本は展示について次のように述べている。「複数形の『Positionalities』をタイトルに掲げる本展では、社会・政治的批評性をはらむ現代美術の作品のなかにアーティストたちの異なる立ち位置(ポジショナリティ)を前景化したい。それゆえ、この展覧会は『ソーシャリー・エンゲージド・アート』や『アート・アクティビズム』をめぐる学際的議論に対しても、新たな角度から一石を投じるものとなる」。
*──「unheimlich」という語にあらかじめ含まれる「heim-lich(英語のhomish/home+ish)=故郷・馴染みがある」を否定する「un-」をさらに二重化した造語。
「Positionalities」の言葉を冠した本展は、3人の現代アーティストの作品を並置することを通じて、作家が多様な社会・政治的問題にアプローチする時の立ち位置の重層性を浮かび上がらせる試み。
3人の作家について山本は、「ソーシャリー・エンゲージド・アートやアート・アクティビズムの観点から眺めると、美術史的文脈とも接続させながら、芸術を通して社会と個人の関係性を問い続けてきた山田、金、東恩納の実践はいずれもユニークかつ重要なものと言える」と述べると同時に、「加えて、ときにエモーショナルにときに挑発的に鑑賞者を刺激する彼らの作品は、アナリティカルで客観的視座を備えた作品の多い日本におけるソーシャリー・エンゲージド・アートやアート・アクティビズムの領域で異彩を放つ」と考察している。
山田は、ニヒリズムとユーモアを背景に、ミニマルでコンセプチュアルな作品を、写真や映像、立体、平面と様々な作品形式で展開。近年はテキストを使った作品制作に注力している。「hahaha」シリーズは2020年、ロンドン滞在中に失声症になった経験に由来。2013年には、The ArmoryShowのキュレーション部門において、当時のアンディ・ウォーホール美術館(ピッツバーグ)館長のエリック・シャイナーにより唯一の日本人として選出され話題となった。
金はシルクスクリーンの技法を応用し、蝋を塗ったパネルに定着させたイメージに熱を加えることで、そのイメージが溶けて崩れながら固められるという独自の手法を使って作品を制作。その手法を通じて、在日3世として日本に生まれ育った状況を投影している。
東恩納は1990年代に、フロイトが論じた、日常身の回りにあるモノに潜む「不気味さ/unheimlich」をテーマに制作をスタートさせた。蛍光灯を多用した「シャンデリア」シリーズなどで知られ、近年は「un-unheimlich(ウン-ウンハイムリヒ)*」というアイデアのもと、長らく自身の作品ベースにあった「不気味さ」という概念の機能・有効性を問い直すをことを試みている。
山田、金、東恩納は「社会-個人-歴史」の連累のなかで過激で挑発的な芸術実践を行い、それらは言語化しにくい感情や情動、あるいはその徹底した欠如に基礎付けられている点で共通しているが、それぞれの作品における作家自身の立ち位置は大きく異なるという。
本展キュレーターの山本は展示について次のように述べている。「複数形の『Positionalities』をタイトルに掲げる本展では、社会・政治的批評性をはらむ現代美術の作品のなかにアーティストたちの異なる立ち位置(ポジショナリティ)を前景化したい。それゆえ、この展覧会は『ソーシャリー・エンゲージド・アート』や『アート・アクティビズム』をめぐる学際的議論に対しても、新たな角度から一石を投じるものとなる」。
*──「unheimlich」という語にあらかじめ含まれる「heim-lich(英語のhomish/home+ish)=故郷・馴染みがある」を否定する「un-」をさらに二重化した造語。