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メディア・アート

Media Art

 デジタル・テクノロジーを活用した芸術作品の総称。時代、使用されている技術などによって多様な関連領域を派生させるため明確な定義を下すのは難しいが、現在使われている意味での「メディア・アート」という言葉が広まり始めたのは1980年代以降のことである。そのルーツには、50年代~60年代に台頭したコンピュータ・アート、70年代のヴィデオ・アートなどを挙げることができる。

 さらに、80年代に隆盛したコンピュータ・グラフィックス、パーソナル・コンピュータの一般への普及といった技術的な背景がメディア・アートの発展に貢献した。メディア・アートの制作においては映像装置、音響装置、コンピュータ、タッチパネルやコントローラーといったインターフェイス、インターネット、スマートフォンなど様々なテクノロジーが使用され、アーティストとエンジニアによる共同制作がしばしば行われる。観客の介入によって作品が変化するインタラクティブな表現形式の導入もメディア・アートの一分野によく見られる傾向である。

 国内では、89年から97年まで開催された「名古屋国際ビエンナーレARTEC」、91年に設立された「キヤノン・アートラボ」などがメディア・アートの発表の場として機能してきた。専門的な学芸員や研究者の数は少ないのが現状だが、97年には国内最大のメディア・アートの美術館として東京・初台に「NTTインターコミュニケーション・センター(ICC)」が開館している。

文=中島水緒

『メディア・アート原論 あなたは、いったい何を探し求めているのか? 』(久保田晃弘、畠中実編、フィルムアート社、2018)
『メディアアートの教科書』(白井雅人ほか編、フィルムアート社、2008)