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ヴィデオ・アート

Video Art

 ヴィデオ装置の録画録音機能を用いた表現。ナムジュン・パイクが開始したと広く認められている。1963年3月にドイツで開催されたパイクの最初の展覧会でのテレビ受像機を並べた作品が、世界で最初のヴィデオ・アートとされる。パイクは多国籍の前衛芸術運動「フルクサス」のメンバーであった。ただしこの作品は、ヴィデオ技術を用いたものではなく、テレビ受像機を用いたものであった。

 65年にパイクが世界で最初の民生用のヴィデオカメラとポータブル録画機のセットを買い求め、撮影し上映したのがヴィデオ・アート制作の始まりと考えられている(しかし異論もある)。ヴィデオ・アートには映像作品以外にも、パフォーマンスやインスタレーション、また先駆的なテクノロジーを使ったアートや、メディア批評が特徴の作品など様々な形式がある。映像制作の撮影や取り扱いが比較的容易なため、あらゆる目的で利用されるようになり、コンセプチュアル・アートやパフォーマンスなどにも取り入れられるようになる。ブルース・ナウマンやヴィト・アコンチなどが行為の記録に、飯村隆彦が視覚の概念的な構造を示すのに使用している。

 またヴィデオ・アートはテレビ放送というマスメディアへの対抗文化メディアとして、社会的なテーマを持ったアート活動やドキュメンタリーでも使われるようになった。さらに後のコンピュータ・グラフィクスにつながる初期の電子映像もヴィデオ・アートのカテゴリーに含まれていた。現在では多くの場合、ヴィデオ・アートは70年代のアナログ電子技術やヴィデオ・テープを使った表現を中心とした、技術の時代特性で考えられる。いまは映像表現はアートとして定着しているが、「ヴィデオ・アート」だけに分類されることはなく多様化している。

文=沖啓介

参考文献
クリス・メイ=アンドリュース『ヴィデオ・アートの歴史—その形式と機能の変遷』(三元社、2013)
ナムジュン・パイク『タイムコラージュ』(isshi press、1984)