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路上観察学会

Rojo-Kansatsu-Gakkai

 赤瀬川原平、藤森照信、南伸坊、林丈二、松田哲夫、杉浦日向子、荒俣宏らにより、筑摩書房『路上観察学入門』の出版を記念した記者発表会に合わせ1986年に結成された。赤瀬川原平らによるトマソン観測センターによる「超芸術トマソン」の探索、南のハリガミ考現学、藤森と堀勇良らの東京建築探偵団、林のマンホール採集など、似たような関心から同時代に都市(路上)のなかのさまざまな事象を採集していた複数の動向が合流することによって生まれた。「学会」を名乗っているが、実際に学会的な活動形態をとっていたわけではない。

 通常は見過ごされた都市の建築、看板、トマソン物件、建物のカケラ、マンホールなどを観察・収集の対象とするその行為は、彼らが自認していたように、今和次郎の考現学を源流とする。その意味で路上観察学会は、現代の考現学として都市のフィールドワーク、すなわち「路上観察」を行なった。赤瀬川はトマソンを、人間の人為や意図に依らない、芸術の外側にある「超芸術」として発見し、また、藤森は、当時建築史的な関心の外側にあった「看板建築」をフィールドワークにより見出していった。彼らにとって「路上」とは、従来的な芸術や建築の「外」を意味した。主に出版メディアを通じ、ユーモラスな視点で街を探索する路上観察の手法は時代の流行ともなり、それに追随するさまざまな動きを生んだ。

文=沢山遼

参考文献
『路上観察学入門』(赤瀬川原平、南伸坊、藤森照信ほか著、筑摩書房[ちくま文庫]、1993)