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夜の会

Yoru-no-kai

 評論家の花田清輝、画家の岡本太郎が発起人となり、総合芸術運動を掲げて1948年に発足した研究会。会の名称は、当時岡本のアトリエに掛かっていた作品《夜》にちなんで付けられたものである。野間宏、椎名麟三、埴谷雄高、佐々木基一といった顔ぶれが示すとおり、その同人には、いわゆる第一次戦後派を中心とする文学者が揃っていた。後に、安部公房、関根弘が参加。彼らの多くは、47年に設立された綜合文化協会の機関誌として花田らが創刊した、『綜合文化』に携わる面々でもあった。

 主要な活動形態として、東中野のレストラン「モナミ」を拠点とした公開討論会が連続的に催され、その参加者の中には針生一郎の姿もあった。花田の「リアリズム序説」、岡本の「対極主義」をはじめとする報告が同人から発せられ、それを受けて出席者が討議を展開した。第二次大戦後という状況においてアヴァンギャルドを標榜したこの会の歴史的位置を考えるとき、その中核をなした花田と岡本の思想的共鳴は特筆すべき事柄である。すなわち、理知と本能、抽象芸術と超現実主義、外部の現実と内部の現実、といった二項の闘争から、両者の弁証法的統一としての「内的なリアリズム」を導くという花田の方法論は、抽象的要素と超現実的要素を「対立したまま」同在させるという岡本の「対極主義」と通じている。

 「夜の会」自体の活動期間は短いものだったが、発足した年のうちに「アヴァンギャルド芸術研究会」へと派生して喜福寺(東京・本郷)での合評会を催し、さらに翌年には安部公房が主導する「世紀の会」と合流していく。また、こうした移行の中で北代省三、山口勝弘といった、後に「実験工房」を結成するメンバーも加わるなど、戦後のジャンル越境的な数々の運動を醸成した点で、「夜の会」の重要性は確かなものといえる。

文=勝俣涼

参考文献
『対極と爆発 岡本太郎の宇宙Ⅰ』(岡本太郎著、山下裕二・椹木野衣・平野暁臣編、筑摩書房、2011)
『アヴァンギャルド芸術』(花田清輝著、講談社、1994)