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ランド・アート

Land Art

 砂漠や湖といった野外の一帯を造成し、大規模なスケールで実現される、1960年代後半から現れた作品群の総称。「アース・アート」「アース・ワーク」とも呼ばれる。
 
 美術館やギャラリーのホワイトキューブは、均質な背景として、そこに設置される作品に自律性を賦与する。反対に、その場その場の特殊な環境的条件や地誌学的意味を含み込んだ大地の形質が作品として結実するランド・アートは、したがって、それ自身以外の参照項を排除するモダニズム的な自律性の美学とは異質な性格を備えている。
 
 美術批評家のロザリンド・クラウスは論文「展開された場における彫刻」(1979)において、「風景でもなく(非-風景)、建築でもない(非-建築)」という排除の論理の結合が、それ(「彫刻」)以外の何ものでもないもの、としてのモダニズム彫刻の成立要件を導いたとする。しかしその後、非-風景の肯定的な表現として建築が、非-建築の肯定的な表現として風景が転倒的に導かれ、建築/非-建築/風景/非-風景、という四項が結節する論理的な場が展開される。これら各項の結合によって、表現形態は四つのカテゴリーへと類別され、彫刻と呼ばれるものの地位は歴史的な変化をこうむることとなる。こうした状況において、彫刻にまつわる実践はポストモダニズムに突入したとクラウスは述べ、ランド・アートの登場はその指標として看取されている。

 クラウスの理路は、ストーンヘンジやナスカの地上絵といった考古学的遺産と同時代のランド・アートのあいだに親密な類縁性を見出す傾向に対し、否定的な評価を下すものである。両者すなわち太古と現在の系統的な結びつけは、あるひとつのカテゴリーを普遍的なものとして正当化することを目論む、歴史主義の態度として批判される。そして一群のランド・アートはむしろ、彫刻という「歴史的に境界づけられた」カテゴリーの脈絡において理解すべき形態とされる。

文=勝俣涼

参考文献
ロザリンド・クラウス「彫刻とポストモダン 展開された場における彫刻」
『反美学 ポストモダンの諸相』(ハル・フォスター編、室井尚+吉岡洋訳、勁草書房、1987)