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ポップ・アート

Pop Art

 英国で1950年代中期、アメリカでは後期に登場し、1960年代に隆盛した表現。美術史的には、当時、支配的だった抽象表現主義への反発から始まった。またアーティストにとっては、自分が受けた美術教育や、美術館収蔵品と身近な日常品との文化差を感じ、大衆文化やコマーシャルな事物、具体的には、アメリカ国旗、コカ・コーラ、キャンベル・スープ缶、有名人のポートレイト、事件写真、コミックなどを題材にし、文化的に強烈でディストラクティブな活動であった。イギリスではリチャード・ハミルトン、エドゥアルド・パオロッツィらが参加する集団「インディペンデント・グループ(IG)」に集うアーティストたちにより、ややアカデミックな始まり方をし、そこで「ポップ・アート」という言葉が生まれた。

 アメリカでは、第二次大戦後に、広告、マスメディア、雑誌などの大衆文化や消費文化の要素をシンボリックに表現に取りこんでいった。両者に共通するのは、アメリカン・ポップ・カルチャーとの関わりである。経済的には事実上唯一の第二次大戦戦勝国であったアメリカが世界的に戦後復興策を実施したことによる文化的影響力が背景にあった。フランスではヌーヴォー・レアリスムに影響し、後に日本でも出現するポップ・アートの傾向や親米性もこの流れにある。

 アメリカのポップ・アート登場の経緯には、ジャスパー・ジョーンズ、ロバート・ラウシェンバーグらによる「ネオ・ダダ」があり、それに続いて、コミックを描くロイ・リキテンスタインや、大量生産プロダクツやマスメディアのイメージを取り入れたアンディ・ウォーホル、その他にトム・ウェッセルマン、ジェームス・ローゼンクイスト、クラエス・オルデンバーグらが加えられる。ただし当時、批評家ルーシー・リパードは、リキテンスタイン以下の5名がニューヨークでは正真正銘の「ポップ・アーティスト」であり、ジョーンズらの作品はポップ・アート初期の出発点にあたるが、マルセル・デュシャンの影響や絵画性を理由に区別していた。

 ポップ・アートは、アメリカの経済力や文化影響力とベトナム戦争があった60年代を通して世界に広がっていった。

文=沖啓介

ハル・フォスター『第一ポップ時代:ハミルトン、リクテンスタイン、ウォーホール、リヒター、ルシェー、あるいはポップアートをめぐる五つのイメージ』(河出書房新社、2014)
マーク・フランシス、ハル・フォスター『POP』 (Phaidon、2005)
東野芳明『アメリカ「虚像培養国誌」』(美術出版社、1968)
ルーシー・R・リパードほか『ポップ・アート』(紀伊国屋書店、1967)