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ジョルジョ・ヴァザーリ

Giorgio Vasari

 ジョルジョ・ヴァザーリはマニエリスムの画家。1511年生まれ、トスカーナ地方のアレッツォ出身。イタリア各地での見聞をもとに、画家・彫刻家・建築家の伝記を一冊にまとめた『芸術家列伝』の著者としても知られる。50年に出版された同書は、初期〜盛期ルネサンスの動向を区分するにあたって重要な参考資料でもある。

 ヴァザーリの見解では、ルネサンスはチマブーエとその弟子にあたるジョットを始まりとして、次世代のマサッチオやボッティチェリ、そしてレオナルド・ダ・ヴィンチらの登場によって全盛期に入り、その頂点がミケランジェロであるとまとめている。68年には現代に伝わる『芸術家列伝』の改訂版を刊行。絵画・彫刻・建築の柱となる「素描」を重視し、師・ミケランジェロを長として創設した知識人の集い「アカデミア・デル・ディセーニョ(素描アカデミー)」にもその名称を付けている。

 著述家としての活動に光を当てられることが多いが、メディチ家などの庇護下で、画家としてフィレンツェやローマで仕事を請け負い、マニエリスムの絵画やフレスコ画を残している。ミケランジェロとラファエルの模倣から生まれたマニエリスムは、発祥当時は称賛をもって迎えられ、27年のローマ掠奪を逃れた画家たちによりイタリア各地に広がった。しかし17世紀では誇張された表現が批判され、いっぽう20世紀にはその幻想性が再評価されるなど時代によって受け入れ方が異なる。マニエリスムから派生した動向に、フォンテーヌブロー派やプラハの一派が挙げられる。

 ヴァザーリはマニエリスムの画家、美術史家であると同時に優れた建築家でもあった。建築について知識を深めるよう助言したのもミケランジェロであり、代表的なものでは現在のウフィツィ美術館の設計などを手がけた。74年没。