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円空

Enku

 円空は江戸時代初期の僧。1632年に美濃国(現・岐阜県)に生まれ、32歳の頃から仏像を彫り始めた。東海をはじめ、近畿、関東、東北、北海道など諸国を行脚しながら、旅先で仏像を制作。寺社からの依頼を受けて制作しただけではなく、世話になった人々へのお礼のためにつくることもあったとされる。生涯で12万体もの仏像をつくることを発願したと伝えられ、廃仏毀釈や戦争を経てもなお、5000体以上が現存。小さなものから2メートルを超える作品まで様々な仏像を残した。晩年には飛騨高山に滞在し、63歳で没するまで仏像を彫り続けた。「円空仏」と呼ばれるその木像の最大の特徴は、素朴で荒々しい造形。ナタやノミで勢いよくかたちを彫り出し、装飾や色彩、漆塗を施すことなく、木そのものの素材感をむき出しにしている表現によって、ほかに類を見ない独自のスタイルを確立している。同時期のほかの仏像と比べて、表情が豊かに見えるところも魅力のひとつ。その背景にある思想には密教信仰や山岳修験との接点も見られるが、のちに仏像を彫る際の決まりごとから自由に逸脱し、自然信仰や神仏習合の影響が見られるようになる。岐阜県、愛知県の寺社を中心にその作品を見ることができる。