EXHIBITIONS

国宝手鑑「見努世友」と古筆の美

2022.04.23 - 06.05

古筆手鑑「見努世友」(部分) 奈良時代~室町時代 国宝 出光美術館蔵

扇面法華経冊子断簡 平安時代 重要文化財 出光美術館蔵

伝 藤原公任 石山切 伊勢集 平安時代 出光美術館蔵

 新型コロナウイルス感染症の影響で休館していた出光美術館が再開館。6月5日まで、書の優品を紹介する展覧会「国宝手鑑『見努世友』と古筆の美」を開催中だ。

 飛鳥時代以降、中国の書法を取り込みながら和様化した日本の書。そのなかで平安時代には仮名が誕生するなど日本独自の文化を開花させた。平安・鎌倉時代の優れた筆跡は、南北朝時代には「古筆」と呼ばれ、今日に至るまで尊重され、伝わっている。

「古筆」は一般的に平安時代・鎌倉時代の和歌を書いた筆跡を指すが、広くは古人の優れた筆跡や絵画のことを意味する。歌書だけではなく、写経や物語、懐紙や短冊、日記や書状など、その内容は様々で、色とりどりの料紙を用い、優美な線で書かれた筆跡には当時の美意識がうかがえる。これらは、のちの時代に賞玩されるなかで、切り分けられて「古筆切(断簡)」として鑑賞されるものも少なくない。古筆切は、鑑賞や蒐集を目的として掛軸や手鑑(古筆切を貼り込んだアルバム)に仕立てられ、多くの鑑賞者を楽しませてきた。

 本展では、出光美術館の書の優品を厳選して、魅力あふれる古筆の世界を展覧。仮名の名品とされる「高野切第一種」「継色紙」「中務集」をはじめ、同館所蔵の古筆の優品を公開する。

 なかでも見どころとなるのは、全229葉の古筆切を収めた古筆手鑑「見努世友」(国宝)の修復後大公開。本手鑑は、江戸時代に古筆の鑑定を専門職とした古筆家が製作した基準作とされており、奈良時代の秀逸な写経切や平安時代に書写された優れた仮名の書を多数含む。もともと折帖装の表・裏(両面)に本紙が貼られている状態だったが、「保存」の観点から折帖を二帖作製し、表・裏の本紙をそれぞれ別々の折帖(片面)に貼り戻しとなった。修復を終え、美しくよみがえった古筆手鑑「見努世友」を鑑賞できる貴重な機会となる。

 また本展覧会にあわせ、「茶の湯の美 ─茶道具の名品」として出光コレクションの茶道具の優品も特集する。