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EXHIBITIONS

水上愛美、神農理恵「ヘプタポッド・ソルレソル・ルーインズ」

2022.03.05 - 03.27

キービジュアル

水上愛美 Any number of wishes is acceptable VI 2022

水上愛美 Labyrinths, threads, birds. 2022

水上愛美 Bloom 2021

水上愛美「Catharsis Bed」 by 4649 2022 CADAN有楽町での展示風景
撮影=坂本理 Courtesy of 4649, CADAN YURAKUCHO

神農理恵 block on ribbon#3 2021 撮影=松尾宇人

神農理恵 コンクリートのロード 2017

神農理恵 空と山とピンクの船 2017

神農理恵 dog(big) 2021 撮影=高木遊

 水上愛美と神農理恵の2人展「Heptapod Solresol Ruins(ヘプタポッド・ソルレソル・ルーインズ)」が京都のVOU / 棒で開催される。現在、東京近郊を拠点とする作家2人の作品を、関西圏で展示形式で紹介する初めての機会となる。

 水上は1992年生まれ、多摩美術大学油画専攻を卒業。近年は最古の砂漠の砂などを混ぜたサンドペーストを塗り重ね、神話や物語を引用した作品を描いている。制作当初から計算されたいくつものレイヤーが存在し、中層の絵をあえて塗り潰して完全に不可視にすることで地層のような時間の蓄積が見える絵画は、不可視な過去未来も同時に存在するという多次元世界への作家の関心を表している。平面作家の登竜門「VOCA展2022」に入選したほか、海外での展覧会にも参加するなど近年注目を浴びる作家のひとりだ。

 神農は1994年生まれ、武蔵野美術大学院造形研究科彫刻コースを修了。コンクリートブロックや鉄、木材など硬質な素材を巧みに扱いながら、パステルカラーの着彩や樹脂などの柔らかな質感によって重みを感じさせないイメージを立ち上がらせる。フリーハンドの溶接跡など重厚で無骨な素材のディティールを残しつつ、あくまでそれら物質の持つ記号的意味とは反対に軽やかで親密、また遊戯的な作品を制作している。2020年に現代芸術振興財団主催のCAF賞で名和晃平審査員賞を受賞するなど、今後の活躍が期待される。

 近作では宇宙へのコズミックコールを題材にした作品も制作している水上は、本展において天文学者の藤田智弘と共同制作した新作を発表。また神農も新たな試みとして音を用いた新作インスタレーションを展示する。

 展覧会のタイトルにつけられた「Heptapod Solresol Ruins(ヘプタポッド・ソルレソル・ルーインズ*)」は、地球外生命とのコンタクトを音や色彩、光でとろうと試みる、または地球外生命の未知の言語を解読する2つの作品から引用されている。その2つからなる遺跡と題された本展は、過去未来の物語のレイヤーを1枚の絵のなかに圧縮し、読み取れないなかで想像することを促す水上の作品と、素材と戯れて意味に回収されるよりも物質の異なる側面を発露させる神農の作品とを掛け合わせることを企図している。

 属性や時間を超えた未知の他者と関わり合いながらもそれらのイメージを硬直化させず接続する2人の作家は、作者と作品、または鑑賞者とのあいだにその物体から発生される流動的な想像性を担保させているとも言える。本展ではそれぞれの作家のつくり出す堅牢な物質から顕れる軽やかなイメージが空間を様々な次元で自由に行き交い、鑑賞者の共時的感覚や、物質的想像力を呼び起こすように展開される。

*──ヘプタポッド(Heptapod)とはアメリカのSF作家テッド・チャンの短編小説『あなたの人生の物語』に登場する異星人の呼称。ソルレソル(Solresol)は、19世紀初めに創られた人工言語で音楽語とも呼ばれ、スティーブン・スピルバーグの映画『未知との遭遇』で有名な音階で宇宙船と人類とが交信をする場面はこれを元に作曲されている。