EXHIBITIONS
現代地方譚9 すきまたゆたう
高知県須崎市で開催されるアートプログラム「現代地方譚」は、様々なジャンルの表現者が地域に滞在し、リサーチや作品制作を行う取り組みだ。2014年から現代美術を中心にアーティストの招聘と発表を行い、2018年以降は音楽家や演劇人も招いた創作を行っている。
須崎市ではいま、公共施設の刷新をはじめ、次世代に向けた様々な取り組みが進むいっぽう、昔からの建物、住人は老朽化と高齢化でこれまで通りの生活の維持を困難にしている。「現代地方譚」は、新しさや便利さ、合理性だけを求めては損なわれてしまう地域の魅力を探り、このまちで暮らしをどう営み、何を次世代へ伝えるのか、「まちの隙間」に焦点を当て、アートを拠りどころにみなで考え、これからのまちづくりを考える。
9回目となる今年のテーマは「 (すきま)たゆたう」。3組のアーティスト、VIDEOTAPEMUSIC(ビデオテープミュージック)、藤木卓(ふじき・たかし)、林友徳(はやし・とものり)による展覧会と、市民参加による創作演劇の上演を行う。
昨年初秋から今冬にかけて須崎を訪れ、リサーチを行った3組は、ミュージシャン、フローリスト、服飾デザイナーなど、それぞれ主軸となる活動で実績を蓄えながら、その領域を超えて行こうとするアーティストたち。「 (すきま)たゆたう」のテーマのもと、表現の境界をたゆたう3者による成果を発表する。
晩春の季語として花見する人を表すことば「花人(はなひと)」を呼称とし、旧来の枠組みにとらわれることなく、生花・植物を用いてインスタレーションやパフォーマンスによる創作活動を展開する藤木卓は、庭師の山﨑広介とともに会場である明治期の日本家屋、旧三浦邸主屋の室内に海岸で拾い集めた漂着物や流木、石塊を持ち込み、互いの均衡を探り、配置した。この作品では花の代わりとして、偶然須崎の海岸に流れ着き、拾い上げられた漂着物、作者が出身地の富山県より持参してきたものなど、様々な出自の異なるモノ同士の間を取り持ち、慎重に配置していくことで、その間に宿る何かをとらえようとしているようだ。こうした作業を繰り返し、会場に立ち現れた景色は、日本海側から太平洋側へと旅してきた作者の移動の道程でもあり、須崎で抽出された情景でもある。
ミュージシャンであり、映像ディレクターのVIDEOTAPEMUSICは地域の景観資源である大小の貨物船や漁船の行き交う港湾風景を背景に野外ライブコンサートを開催。滞在中に住民に募ったホームビデオをサンプリングして映像と音楽で制作された今作は、過去に撮影されたまま、現在まで磁気テープ上に残されていた記憶を、浜辺で拾い集めた漂着物になぞらえている。
服飾デザイナーの林友徳は、幼少期のノスタルジーと感染症拡大によって外出や交流が制限される現在の状況を重ね合わせ、衣服がパーソナルな居住スペースとして機能する「ヒミツキチ」というコンセプトで制作、発表。テント状のパーソナルスペースは複数個を連結し拡大することができ、リアルなコミュニケーションが復活する未来を予感させるとともに、災害時の供えとしてのアイディアも練りこまれた作品となっている。また会期中、実際に避難所スペースなど屋外に設営するアクションも行う。
そして、市民参加による創作演劇「カワウソ読本」は、会期終盤の2月19日・20日の2日間にかけて上演される。各プログラムの最新情報は「現代地方譚」のウェブサイトをチェックしてほしい。
須崎市ではいま、公共施設の刷新をはじめ、次世代に向けた様々な取り組みが進むいっぽう、昔からの建物、住人は老朽化と高齢化でこれまで通りの生活の維持を困難にしている。「現代地方譚」は、新しさや便利さ、合理性だけを求めては損なわれてしまう地域の魅力を探り、このまちで暮らしをどう営み、何を次世代へ伝えるのか、「まちの隙間」に焦点を当て、アートを拠りどころにみなで考え、これからのまちづくりを考える。
9回目となる今年のテーマは「 (すきま)たゆたう」。3組のアーティスト、VIDEOTAPEMUSIC(ビデオテープミュージック)、藤木卓(ふじき・たかし)、林友徳(はやし・とものり)による展覧会と、市民参加による創作演劇の上演を行う。
昨年初秋から今冬にかけて須崎を訪れ、リサーチを行った3組は、ミュージシャン、フローリスト、服飾デザイナーなど、それぞれ主軸となる活動で実績を蓄えながら、その領域を超えて行こうとするアーティストたち。「 (すきま)たゆたう」のテーマのもと、表現の境界をたゆたう3者による成果を発表する。
晩春の季語として花見する人を表すことば「花人(はなひと)」を呼称とし、旧来の枠組みにとらわれることなく、生花・植物を用いてインスタレーションやパフォーマンスによる創作活動を展開する藤木卓は、庭師の山﨑広介とともに会場である明治期の日本家屋、旧三浦邸主屋の室内に海岸で拾い集めた漂着物や流木、石塊を持ち込み、互いの均衡を探り、配置した。この作品では花の代わりとして、偶然須崎の海岸に流れ着き、拾い上げられた漂着物、作者が出身地の富山県より持参してきたものなど、様々な出自の異なるモノ同士の間を取り持ち、慎重に配置していくことで、その間に宿る何かをとらえようとしているようだ。こうした作業を繰り返し、会場に立ち現れた景色は、日本海側から太平洋側へと旅してきた作者の移動の道程でもあり、須崎で抽出された情景でもある。
ミュージシャンであり、映像ディレクターのVIDEOTAPEMUSICは地域の景観資源である大小の貨物船や漁船の行き交う港湾風景を背景に野外ライブコンサートを開催。滞在中に住民に募ったホームビデオをサンプリングして映像と音楽で制作された今作は、過去に撮影されたまま、現在まで磁気テープ上に残されていた記憶を、浜辺で拾い集めた漂着物になぞらえている。
服飾デザイナーの林友徳は、幼少期のノスタルジーと感染症拡大によって外出や交流が制限される現在の状況を重ね合わせ、衣服がパーソナルな居住スペースとして機能する「ヒミツキチ」というコンセプトで制作、発表。テント状のパーソナルスペースは複数個を連結し拡大することができ、リアルなコミュニケーションが復活する未来を予感させるとともに、災害時の供えとしてのアイディアも練りこまれた作品となっている。また会期中、実際に避難所スペースなど屋外に設営するアクションも行う。
そして、市民参加による創作演劇「カワウソ読本」は、会期終盤の2月19日・20日の2日間にかけて上演される。各プログラムの最新情報は「現代地方譚」のウェブサイトをチェックしてほしい。