EXHIBITIONS

竹中美幸 個展「陰と陽と」

参考作品 竹中美幸 記憶の音(部分) 2020 清流の国ぎふ芸術祭 Art Award IN THE CUBE 2020 展示風景より

 生活に寄り添うモノの記憶を記録・作品化してきたアーティスト、竹中美幸の個展「陰と陽と」がアートフロントギャラリーで開催される。

 竹中は岐阜県生まれ。多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻を卒業後、同大学大学院美術研究科を修了し、東京を拠点に活動。主に透明な素材を用いて制作しており、光や影を取り込んだ平面作品やインスタレーション作品を展開してきた。

 2021年秋、竹中は石川県珠洲市で開催された奥能登国際芸術祭2020+では、日本海を見下ろす高台に位置する廃校を活用した施設スズ・シアター・ミュージアムにて作品を発表。半透明なガラス小屋の中に「大蔵ざらえ」(地域に眠る古い民具や道具を収集した一大プロジェクト)で見つけた、ある人物の日記ごしに覗いた珠洲の現在と過去を表現し、地域に眠る日常を人々の記憶に新たなかたちで焼き付けた。

 また2020年には、岐阜県美術館で開催された「清流の国ぎふ芸術祭 Art Award IN THE CUBE 2020」にて篠原資明(高松市美術館館長)賞を受賞。映像用のフィルムという、いまや過去の遺物に追いやられつつある素材を用いて、光の痕跡と音の記憶を提示した作品《記憶の音》のその素材と手法による独創性が高く評価される。

 作家にとっての4年ぶりとなる個展のテーマは、コロナ禍における変化と消失。35ミリ映像用ポジフィルムによるインスタレーションおよび、平面作品を展示する。

 コロナ禍により閉店した飲食店とその店の歴史が刻まれた家具や食器類。それらを題材に、コロナ禍でひっそりと消失していった、私たちの生活の隣にあった風景を、映像用のフィルムに焼きつけ作品化することで、そっとすくい上げる。光を使うインスタレーション作品は、昼と夜で異なった表情を見せてくれるだろう。