EXHIBITIONS

感覚の領域 今、「経験する」ということ

2022.02.08 - 05.22

[参考図版]中原浩大 Text Book 1995
© Kodai Nakahara, photo: Shigefumi Kato, Courtesy of Gallery Nomart

大岩オスカール Big Wave(2020) 2020 作家蔵 © Oscar Oiwa Studio

[参考図版]飯川雄大 デコレータークラブ 配置・調整・周遊 2018 あまらぶアートラボ A-labでの展示風景
© Takehiro Iikawa, photo: Hyogo Mugyuda, Courtesy of A-lab

[参考図版]藤原康博 Church on Cloud 2009
© Yasuhiro Fujiwara, Thyssen-Bornemisza Art Contemporary Collection, photo: Kenryu Tanaka, Courtesy of MORI YU GALLERY

[参考図版]今村源 きせい・キノコ―2019 2019 リボーンアート・フェスティバル2019での展示風景 © Hajime Imamura

 国立国際美術館が展覧会「感覚の領域 今、『経験する』ということ」を開催。現代美術の分野で独自の視点と手法によって、実験的な創作活動を展開している7名の美術家を紹介する。出品作家は、飯川雄大、伊庭靖子、今村源、大岩オスカール、中原浩大、名和晃平、藤原康博。

 コロナ禍によって、世のなかの混迷の度合いはより深まっている昨今、私たちの生活習慣は大きく変化し、日常生活において多くの行動が制限されるなかで、新しい経験の在り方が問われるようになった。そのような状況のなかで、現代美術は、人々に多様な経験の機会を提供する媒体として注目を集めている。

 本展の7名の作品においても、その経験の質は様々だ。全身の感覚を伴う身体的なもの(飯川雄大、今村源)から、瞼の内側に生起する生理的な反応へと訴えかけるもの(伊庭靖子、中原浩大、名和晃平)、あるいは、記憶や想像力を動員する思考的なもの(大岩オスカール、藤原康博)まで、それぞれが経験の多様性を示唆している。

 美術はつねに時代の様相を反映しながら展開していくもの。いまや美術は、視覚の可能性の限界を押し広げようとする人類の挑戦であった時代を経て、私たちのあらゆる感覚器官を稼働させることによって遭遇する、新しい世界のイメージを開拓する行為であると考えることができる。

 本展は、「感覚の領域」の拡大と言い表すことできる、今日の美術と人間の感覚を取り巻く状況を踏まえながら、美術家たちの進行形の状態にある先鋭的な試みに焦点を当てて紹介する。

 今回展示されるのは、難解な理論や複雑なコンセプトによることなく、感覚的な刺激や直感的な印象によって楽しむことのできる作品ばかり。身体を動かすことによって、感じたり、体験したりする作品も含まれ、日常では経験できない特別な時間を過ごすことができる。

 参加する7名は、いずれも現代美術界で長く活躍し、確かな地歩を築いてきた作家たちだ。7名が現代を見つめながら考え、創作した新作には、混沌する現代社会の状況と、そのなかで日々暮らしている私たちの生き方が投影されている。ユニークな作品とそこに託されたメッセージを、様々な感覚の交錯する場のなかで体験する本展は、私たち自身を見つめ直す機会ともなるだろう。