EXHIBITIONS

αMプロジェクト2020-2021

αM+vol.2 わたしの穴 美術の穴

地底人とミラーレス・ミラー

2022.02.19 - 03.19

デザイン:岡﨑真理子

大川達也 ミラーレス・ミラー 2017

三宅砂織 Garden(Potsdam) 2019 「MOTアニュアル2019 Echo after Echo:仮の声、新しい影」(東京都現代美術館)での展示風景 撮影=森田兼次

谷口暁彦 practice for in-game photography / virtual photography 2018

 αM+(アルファエムプラス)は、ゲストキュレーターによる年約5本の展覧会と連動させながら、αMプロジェクトの独自企画として年1本の展示を開催するもの。2022年は、アーティストの石井友人と高石晃によるアート・プロジェクト「わたしの穴 美術の穴」を迎えた「αM+vol.2 わたしの穴 美術の穴|地底人とミラーレス・ミラー」を2つの会期で行う。

「わたしの穴 美術の穴」は、1970年前後の日本美術史をリサーチすることを主眼に石井友人、榎倉冴香、地主麻衣子、高石晃、桝田倫広により2014年に発足された。15年にメンバーによるグループ展「わたしの穴 美術の穴」を初開催。翌年には冊子『わたしの穴 美術の穴』を出版し、以後、石井友人と高石晃によるアート・プロジェクトとして、藤井博個展「わたしの穴 21世紀の瘡蓋」(2018)のキュレーション、『わたしの穴 21世紀の瘡蓋』の冊子出版および、榎倉康二と高山登、藤井博の3人展「不定領域」、石井友人個展「享楽平面」、高石晃個展「下降庭園」(いずれも2019)のキュレーションを行った。

 今回のテーマ「地底人」と「ミラーレス・ミラー」は、穴というモチーフをめぐる同プロジェクトでの7年間の活動を通じて浮上してきたこと。「日常空間に遍在する穴。穴を実在するものとして認識することは出来ません。そこには何もない。しかし、不可思議にもそこに穴は存在していると感じます(石井友人・高石晃)」。このアンビバレントな経験を通して、私たちの知覚や記憶、情動や想像力は駆動され、そのことの内に人間という認識の枠組みを持った存在、そして美術という制度における人間的営為の根源性があるのではないかと解釈し、石井友人・高石晃の両者が本展を企画。テーマ別に会期を分けて開催し、私たちを取り巻く環境の変容と、その環境と私たちの新たな関係の仕方を、潜在・現象の2つのあり方として表出させることを試みる。

 パート2「ミラーレス・ミラー」(2月19日〜3月19日)のキュレーションは石井友人が担当。参加アーティストは、雨宮庸介、石井友人、大川達也、敷地理、多田圭佑、谷口暁彦、津田道子、藤井博、三宅砂織。

「ミラーレス・ミラー」は、現在の私たちが、自己イメージを孕んだ様々な模像(鏡、ショー・ウィンドウの反映、光学装置が生み出す複製イメージ、スマートフォンやデジタルデバイスにおけるミラーリング、ミラー・ワールド)の世界に加速度的に取り囲まれ、同時的に世界と接しているにも関わらず、なぜか事後的に世界が与えられているように感じることが少なくない状況を踏まえて企画された。

 本展に参加するアーティストたちは、そのような現在の情報環境を積極的に引き受けながら、諸メディアにおける鏡像的構造を逆手に取り、分解・解析することでヒントを得るリバース・エンジニアリングのように私たちを「非-わたし」の方向へ逆流させている。このさかしまが反映される展示空間では、鏡が物理的・空間的・心理的「穴」となり、本来存在し得ない二重の空間(鏡の明るい表面と底)の真っ只中に、私たちを誘う。そこでは「わたし」という認識を構成するのに不可欠な自己イメージが変質し、無数の模像に与えられた意味も大きく変調をきたすことになると言う。

 なお、先がけて開催されるパート1「地底人」(1月15日~2月12日)は高石晃がキュレーションし、高石とともに、高山登、ニコライ・スミノフが参加する。