EXHIBITIONS

この隙に自然が

伊藤存 かなもりゆうこ 長島有里枝

2022.01.08 - 02.23

伊藤存 撮影=来田猛

かなもりゆうこ cordel 撮影=Toshie Kusamoto

長島有里枝 2013.10.14. 17:16 2021

 MtK Contemporary Artで、伊藤存、かなもりゆうこ、長島有里枝による3人展「この隙に自然が」が開催される。

 刺繍作品や立体の小作品、粘土を支持体とした絵などを制作する伊藤存、映像やインスレーション、パフォーマンスを展開するいっぽう、子供や友人たちと作品をつくることも続けているかなもりゆうこ、そして、家族やアイデンティティなど、他者との関係性をテーマとした写真作品を発表してきた長島有里枝。

 本展の「この隙に自然が」というタイトルの背後には、長島が植物を被写体としたポートレイト、コロナ禍のなかで釣り人からの災難を免れた川の魚たち、かなもりが糸や布の破片で紡いだ作品、それに似た河原の河原のカヤネズミの巣、そして足元で冬を越えようとするタンポポと、伊藤が展覧会の開催までの1年間で見つめてきたものたちがある。

「太陽という題名の展覧会を見た後に、その一年後に同じ場所で開かれる展覧会について考えることになった。太陽という展覧会の壮大であっけらかんとしたマッチョさについて、何となく何か思っていると、自分の視点は足元のタンポポのロゼットに落ちた。

ロゼットというのはタンポポのような越年草の冬の形態のことで、日高敏隆のエッセイでその存在を知って以来、気になってそのミニチュア化した形と地面にぺったり張り付いた平面的な姿を、冬の枯れた足元から意識的に見つけ出すようになっている。

光合成を効率よくおこなうため丸く放射状に、そして、冷たい風を避けるように地面に張り付いたその姿は、なるほどミニチュアの太陽にも見える。おひさまに持ってしまうある種の観念的、象徴的な印象が、足元の地面でリアリズムのミニチュアとなって具体化される。

タンポポという植物を想像するときはほぼ間違いなく、放射状に広がる葉っぱの中心から伸びた真っ直ぐな茎のてっぺんに黄色い花の姿が思い浮かぶが、そのタンポポにはロゼットという別の姿もある。もちろん目に見えない根っこの世界もある。それら全てがタンポポということになるが、どうしても大きな声(あのタンポポの姿)が先頭切って耳に入ってきてしまう。別の姿が発するメッセージもキャッチしたい。そして、本当はあのタンポポもメッセージを発している。(伊藤存、展覧会のためのテキストより抜粋。全文はMtK Contemporary Artのウェブサイトに掲載されている)」。