EXHIBITIONS

舘鼻則孝「Descending Painting 」

2021.09.04 - 10.09

舘鼻則孝 Descending Painting 2021 Photo by Keizo Kioku © NORITAKA TATEHANA K.K. Courtesy of KOSAKU KANECHIKA

舘鼻則孝 Baby Heel-less Shoes 2021 Photo by Keizo Kioku © NORITAKA TATEHANA K.K. Courtesy of KOSAKU KANECHIKA

舘鼻則孝 Descending Painting 2021 Photo by Keizo Kioku © NORITAKA TATEHANA K.K. Courtesy of KOSAKU KANECHIKA

舘鼻則孝 Descending Painting 2021 Photo by Keizo Kioku © NORITAKA TATEHANA K.K. Courtesy of KOSAKU KANECHIKA

舘鼻則孝 Descending Layer 2021 Photo by Keizo Kioku © NORITAKA TATEHANA K.K. Courtesy of KOSAKU KANECHIKA

舘鼻則孝 Descending Sculpture 2021 Photo by Keizo Kioku © NORITAKA TATEHANA K.K. Courtesy of KOSAKU KANECHIKA

 KOSAKU KANECHIKAでは、舘鼻則孝の個展「Descending Painting」を開催。9月4日~10月9日まで。

 舘鼻は1985年東京都生まれ。歌舞伎町で銭湯「歌舞伎湯」を営む家系に生まれ鎌倉で育つ。シュタイナー教育に基づく人形作家である母の影響で、幼少期から手でものをつくることを覚える。2010年に東京藝術大学美術学部工芸科染織専攻を卒業。遊女に関する文化研究とともに、友禅染を用いた着物や下駄を制作し、国内にとどまらず、ニューヨーク、パリ、ベルギーなど世界各地でも作品を発表している。また、16年にパリのカルティエ現代美術財団で文楽公演を開催するなど幅広く活動。今年、東京都が主宰する「江戸東京きらりプロジェクト」の一環として企画された「江戸東京リシンク」(和敬塾旧細川侯爵邸、2021/オンライン)の展覧会ディレクターを務めた。

 舘鼻は18年の展覧会「Beyond the Vanishing Point」以降、消失点や境界線という価値観を通して、此岸と対岸の双方の視点を結びつける要素の探究を続けてきた。そして20年に開催した展覧会「Dual Dialogue」では、「Duality Painting」として一対の視点を1枚の絵画のなかに共存させた。本展で公開される新たな「Descending Painting」は、幾層にも重なるレイヤー状の表現が作品に用いられている。それはたんに立体的な絵画であるというフォーマットの探究以上に、舘鼻が向き合う「視点」への強い関心が表れている。

 同名シリーズは、仏教において、臨終を迎える際に、阿弥陀如来と菩薩が雲に乗り迎えに現れる場面を描いた「来迎図」に着想を得て制作されたもの。舘鼻の描く今作の来迎図には、阿弥陀如来と菩薩が描かれる代わりに雷が描かれている。雷は、神道における依代に「神のみたまが依り憑く」場面をモチーフとして表しているとも言える。「生と死」や、その「境界線」という視点から日本独自の死生観を表現する舘鼻の作品上には、仏教と神道における双方の価値観が共存する「神仏習合」と呼ばれる習合思想が示されている。

 舘鼻は本展に際し、「作品を通して自分と向き合うための視点の探究を行ってきた。生と死、記憶と現実。そして、自分と他人。対岸にある新たな価値観が一対の視点を結び付けるだろう」とコメント。舘鼻の活動の核には、日本古来の文化的に価値の高い部分と現代の要素を組み合わせることで、新たな視点と世界観を提示すること、それがいまの時代を生きる人に寄り添うことができるかという問いがつねにある。