EXHIBITIONS

段々降りてゆく —九州の地に根を張る7組の表現者

加藤笑平 mass of roman tic go/ちくご 2018 Photo by Shintaro Yamanaka

すうひゃん。 リトルメロディ 2016

畑直幸 /g/b//u 2020

オレクトロニカ×mama!milk 風景への参道 2016

宮本華子 出られないから、乗ってみた。 2020

ミティ・ルアンクリタヤー(HOTEL ASIA PROJECT) サトーン・サンセット 2018

山内光枝 信号波 2020

 熊本市現代美術館が開催する「段々降りてゆく —九州の地に根を張る7組の表現者」では、九州を拠点にし、自らの生きる環境に根差した問題意識を持って主体的な活動を行う同時代の表現者7組を紹介する。

 本展タイトルの「段々降りてゆく」は、熊本出身の詩人・谷川雁(たにがわ・がん)の詩論『原点が存在する』(1954)の一節を参照したもの。本展では、芸術のインフラが整った環境にない地方には、その地方ごとの芸術の存在の仕方があるはずとして、地方を活動の地に選び、自身の存在の核心をなしているものを掴もうと地道な模索を続ける作家の姿勢、あるいは自らのいる環境・状況を見定めた上でそこから自身の表現を立ち上げようとする姿勢を、谷川の詩にある「段々降りてゆく」という言葉のイメージに重ねた。

 出展者は、自ら農耕・塩づくりを行い生活しながら、自作の、あるいは身の回りの素材を用いて作品を制作し、相反するものが共存している日常の状態をかたちにする加藤笑平、子供という対象を起点とした絵画やドローイングを通して、人間のあり方を問うすうひゃん。、オブジェや林などの被写体に塗装やライティングといった様々な操作を加えて撮影し、写真の視覚構造をあらわにする実験的作品に取り組む畑直幸、個人的な経験を出発点に、「家族」や「家」、「他者とのつながり」といった普遍的テーマに対峙する作品を手がける宮本華子。加藤亮と児玉順平による美術ユニットで、「制作と生活」をテーマに大分県竹田を拠点に活動を展開する「オレクトロニカ」。北九州のアーティストラン・スペースGALLERY SOAPが、アジア各地のアーティストやキュレーター、研究者などと協働するプロジェクト「HOTEL ASIA PROJECT」、裸の海女が佇む一枚の古い写真との出逢いをきっかけに、海を基点とした人間や世界のあらわれを母胎に表現活動を続けている山内光枝の7組。

 本展では、それぞれの場所で展開される作家たちの実践例を紹介し、九州の環境と状況に即した芸術や表現者のあり方、そして「私たちにとって切実な表現とは何か」ということを、来場者とともに考えられればとしている。