EXHIBITIONS

渡辺えつこ × 母袋俊也「Gegenüberstellung / confrontation 対置」

母袋俊也 Qf・SHOH《掌》90・Holz-22 2020 ©︎ Toshiya Motai

渡辺えつこ Chamber 2021 ©︎ Etsuko Watanabe Courtesy of Yumiko Chiba Associates

 ユミコチバアソシエイツで、渡辺えつこと母袋俊也による2人展「Gegenüberstellung / confrontation 対置」が開催される。

 渡辺は1960年東京都生まれ。武蔵野美術大学造形学部油絵学科を卒業後、国立デュッセルドルフ芸術大学絵画科でゲルハルト・リヒターに師事し、以来、約30年間にわたってドイツを拠点に活動した。現在は日本にスタジオを構え、作品を制作。テレビのモニターに映された映像や、解像度の荒い画像を思わせる場面を写実的に描く絵画などを発表してきた。

 瞬間的に「画像」へと変換された一場面を、手作業を伴う絵画という手法によって、画像の歪みやノイズまでを丹念になぞるようにして描く渡辺の作品は、「画像」と「絵画」の間にある複数の時間の層や、デジタルとアナログのあいだにある視覚認識の差異を改めて浮き彫りにする。

 母袋は1954年長野県生まれ。東京造形大学美術学科絵画専攻で学び、83年に渡独。フランクフルト美術大学絵画・美術理論科でライマー・ヨヒムス教授から教えを受けるなど、渡辺と同じく、ドイツでの活動歴を持つ画家・美術理論家だ。2019年には、自身の美術論集を編纂した『絵画へ 1990-2018 美術論集』を出版している。

 これまで母袋は、制作と理論の双方から「絵画におけるフォーマートと精神性」についての思索を深めてきた。その思考は、画家のグリューネヴァルトが感染症の治療を行う施療院のために描いた《磔刑図》から着想を得た絵画や、アンドレイ・ルブリョフのイコン画をモチーフにした、近年の正方形フォーマットの「Qf」系絵画シリーズに結実している。

 本展では、2人の画家が絵画という実践を通して、様々な「対置」を展開する。