EXHIBITIONS

特別陳列

瀬戸内の日本画家たち

2020.12.19 - 2021.03.14

上島鳳山 雲中寿老図 大正6年 笠岡市立竹喬美術館蔵

大林千萬樹 俵牛 制作年不詳 笠岡市立竹喬美術館蔵

大林千萬樹 かすむ春 はるる秋(部分) 大正末期 笠岡市立竹喬美術館蔵

林正明 瀬戸内早春(右隻) 制作年不詳 寄託品

 笠岡市立竹喬美術館はこれまで「瀬戸内」をテーマとして、風土から生まれた作品や、この地の風光への憧憬により制作された作品を紹介する展覧会を開催してきた。

 今回の特別陳列では「瀬戸内の日本画家たち」と題して、岡山出身の上島鳳山(うえしま・ほうざん、1875〜1920)と大林千萬樹(おおばやし・ちまき、1887〜1959)による新春の訪れを告げる作品を中心に、笠岡に縁の深い林正明(はやし・まさあき、1931〜2012)が描いた瀬戸内の心安らぐ風景などを紹介する。

 上島鳳山は、正月の座敷を彩る《松図屏風》(六曲一双)に描いた老松、稚松により長寿息災を、また《三社 石清水八幡宮・伊勢神宮・春日大社》(三幅対)では、家族の健康と国家の安寧を祈念した。円山派を継承する手堅くも軽やかな筆致によって描かれた画面からは、清々しさを感じ取ることができる。

 大林千萬樹は、新春の風俗である毬(まり)つきを題材とした《春興》(二曲一双)、また春秋の風情を対比した《かすむ春 はるる秋》(対幅)により、鏑木清方に師事した風俗美人画家として初春の喜びを表現した。

 そして数少ない小野竹喬の門下である林正明は、生前に瀬戸内海近郊を度々訪れ、その海や山を描いた。林は《瀬戸内早春》(六曲一双)において、牛窓の早春の朝を題材として、島々に次第に光が満ちてくる様相を爽快にとらえた。

 本展では併せて、東原方僊(ひがしはら・ほうせん)や高橋秋華(たかはし・しゅうか)の花鳥画など、瀬戸内出身の画家たちによる作品約50点も展示している。