EXHIBITIONS

約束の凝集 vol.1

曽根裕「石器時代最後の夜」

2020.08.29 - 11.14

デザイン=熊谷篤史

四半世紀(曽根裕+永田康祐) PC: The Last Night of the Stone Age(Prototype v1) 2020

曽根裕 Birthday Party 1965-2020 2020

 長谷川新(インディペンデントキュレーター)をゲストキュレーターに迎えた、2020〜21年度のαMプロジェクト「約束の凝集」がスタート。最初の展覧会では、国内外で活動するアーティスト・曽根裕(そね・ゆたか)を迎える。

 曽根は1965年生まれ。中国、メキシコ、ベルギー、日本を拠点に活動。これまで大理石を使った大型の彫刻作品や彫刻を用いたパフォーマンス、ヴィデオやインスタレーション、ドローイングなど、多様な表現を展開してきた。

 本展は、作家にとって東京では9年ぶりとなる個展。「石器時代最後の夜」をタイトルに、3点のインスタレーション《The Last Night of the Stone Age》《Birthday Party 1965-2020》《Double Log (Washinoyama tuff)》で構成される。

 出品作品のうち、《The Last Night of the Stone Age》、《Birthday Party 1965-2020》の2点の映像インスタレーションは、大理石でつくられた最新の環境にも対応しうる水冷式パソコン《PC: The Last Night of the Stone Age(Prototype v1)》から出力される。この大理石のパソコンは、アーティスト・永田康祐とのユニット「四半世紀」による共同作品で、現在もまだ自分たちは石器時代にいるのだという強い確信のもとに制作された。

 90年代の半ばに大理石という素材に出会って以来、曽根のつくる作品の多くは石であり、中国でも日本でも、曽根の周りには多くの石工たちがいる。大理石のPCから投影される《The Last Night of the Stone Age》は、石を砕き、削り、粉塵に塗れ、互いに異なる言語をぶつけ合って最高の作品をつくろうとする者たちの四半世紀にわたる労働/制作の記録であり、石と人間の共存の記録である。

《Birthday Party 1965-2020》は、1997年のミュンスター彫刻プロジェクトで、曽根が毎日のように自分の「バースデーパーティー」を開く様子をまとめた映像に新作を加えたもの。《The Last Night of the Stone Age》と同じ大理石のPCから出力され、一回性と反復、個人的なこととパブリックといった矛盾を含みながら、過去と未来を行き来する。

 そして《Double Log (Washinoyama tuff)》は、香川県にある鷲ノ山の凝灰岩を使い、モチーフと素材の反転を基礎としたコンセプチュアルな彫刻作品。曽根がスタジオを構えようとしている鷲ノ山で出会った、大工や石工との協働から生まれた。

「約束の凝集」第2弾以降の参加作家は、永田康祐、黑田菜月、荒木悠、高橋大輔。キュレーターの長谷川は企画にあたって、「今回のαMは、5人のアーティストが、自分が生きて死ぬ時代に、それぞれのやり方で、未来を確信する技術の、研鑽と共有です」と言葉を寄せている。